初出:2017/07/11 Vol.232 生理学的なストレスとの付き合い方
改稿:2022/04/03
本日は「ストレス」とは何かという話をお送りする。
溜め込みすぎると良くないというのは一般的ですが・・・
限度を超えると疲弊して死ぬから割とシャレにならん。とはいえ、完全にストレスフリーで生きられるわけでもないからな。
はっはっは。現代人は実にストレスフルでいかんな! ストレス解消には良いものがあるぞ!
嫌な予感しかしないんですが・・・誰が死ぬんです?
・・・これは封印されし暗黒理科すごろく怪人向けハードモードじゃないか。どっから引っ張り出して来たこんなもん。
今回はさらに「ジュマンジ」仕様の阿鼻叫喚オプション付きだ! さぁ、サイコロを振れ!
生理学的なストレスの話
人間社会というのはとにかくストレスの多いものです。
職場や学校、恋愛や友人関係などなど、うまくいってる時もあれば、ストレスフルな状態になる事もあります。
さて、この「ストレス」というのは一体なんなのでしょうか。
「そんなの、嫌だなーって思うこと全部だよ」って言う人もいるかもしれません。
その通り。全部ストレスです。
仕事が終わらないのも、ガミガミ言う上司も、出来ない部下も、終わらないレポートもみんなストレスなのです。
では、ストレスとは生物学的に見ると何なのでしょう?
ストレスに関する論文
1936年「ネイチャー」に掲載されたある有名な論文があります。
マウスの実験において、知らず知らずのうちにいろいろなストレスを与えてしまっており、それが体の機能やホルモンの量の変化に関係しているという事を発見、そしてそれが、3段階に大きくステージが分けられることを紹介したものです。
これが現代での「ストレスが体に影響を及ぼす」という、今となっては当たり前の事実、その突破口となった画期的な論文です。
論文発表者のハンス・セリエは、この3段階のステージを「警告反応期」「抵抗期」「疲憊期(ひはいき)」と分けました。
ストレスの三段階ステージ
初期段階・警告反応期
「警告反応期」とは、みなさんも経験があると思いますが、思わぬストレスにより、ドキドキして前後不覚になったり、キョドったり、冷静な判断が難しくなる状態です。
このとき脳内では視床下部、下垂体、または副腎皮質から臨戦態勢をとるために各種ホルモンが分泌されます。
まだ戻れる・抵抗期
「抵抗期」は、ストレス自体に適応した状態といえます。ストレスを感じても「まあこの程度」と冷静に対応でき、正常な状態を取り戻したように見えます。
実際、この状態で適切に休息を入れていくと、体にあまりダメージを残しません。ストレスに対する反応はここで止まります。
最終段階・疲憊期
しかし、ここで休息を与えず、ストレスを連続的に受け続けると話は違ってきます。
ストレスに抵抗するために分泌したホルモンの副作用や、臓器の酷使によって、蓄積されたダメージが表に現れてくるのです。これが第3段階の「疲憊期」だといえます。
ストレスと死の境界線
この第3段階「疲憊期」に至ると、慢性的な痛みや鬱など、物理的に体に歪みが出てきてしまいます。
ここで引き返せないと、疲弊死まったなしなわけです。たまに勘違いしてる人がいますが、過度のストレスは「心の痛み」だけではなく、明確に身体症状として出ます。
ある一定のラインを超えてしまうと、気のせいとか根性とかでどうにかなる問題ではないのです。
問題なのは、この一定のラインというもの。どこまでがストレスでどこまでは我慢すべきか・・・ということなのですが、こればかりは本人にしかわかりません。
我慢強すぎるのも問題で、耐えに耐えて無理を重ねて、限界を超えたところでポックリと疲弊死してしまう・・・というのはシャレになりません。
社会生活をする上である程度のストレスは仕方ない
一方で、何一つストレスらしいストレスを受けないまま社会に出ると、ちょっとしたストレスにも耐えられずに仕事が長続きせず・・・社会からのけ者にされてしまう、ということだってあり得ます。
無論「だから耐えろ」「ちょっとやそっとでなんだ」「逃げるな」などとは申しません。
これは個人個人で物差しの違う話です。自分が大丈夫だったから他人もそう・・・とは限らないという、そういう典型例だと言えるでしょう。
いわゆる生存者バイアスという奴なので、これを振りかざすとワタミ的なアレになります。
社会生活を送る上でストレスを受けるのは仕方がない
ただ少なくとも。社会というのは、多くの個性がぶつかる場所なので、ストレスが発生しやすい場所だと、そう言えます。
こうした、社会で受けるストレスというものは、その人が選んだ仕事だったり環境だったりなので、ある程度は仕方がありません。
ストレスを理由に物事を放り出すのは、自分を守るためには必要なことかもしれませんが、だからといって最低限やり方は考えないと、今度は社会的に死ぬことになります。
当たり前ですが、無責任に仕事を放棄するのを繰り返す人に仕事を振る人はいません。
度を超えている場合は速やかに転職すべき
とはいえ、世の中には信じられないようなブラック企業があり、これまた労働基準法をガン無視した長時間労働を強いるところがある、というのも事実です。
抵抗期のところで触れたように、人間はある程度までストレスに順応することができます。
できますが、限界を超えるとどうにもならないというのも、触れた通りです。故にブラック労働で壊れる人が続出するわけですね。
長時間労働にさらされすぎていると思考能力が低下し、肉体的にも疲労の極地にあるので、現状から抜け出そうとする発想すら出てこなくなることもあります。
そんな状態でまともな仕事ができるわけもないので、ブラック労働は最悪なわけですが、蔓延しているのが実情なのが辛いところですね。
自ら進んで要らないストレスを受ける必要はない
というわけで、受けなくても良いストレスまで受ける必要はないのですが・・・不思議な事に、自らストレスを摂取する事もあります。
そう、以前も話題にした、テレビでやってるワイドショーなんかがそれにあたります。
ここに来てテレビのディスりかよ、と思われるかもしれませんが・・・(笑)、この辺の話は別立てで記事があるので、以下よりあわせてご覧いただければ幸いです。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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