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遠心力って具体的に何なのか、正確に説明できますか?
こんにちは、シラノです。
日常でもしばしば使う機会のある「遠心力」という言葉。
これは、当たり前にわかっているようなつもりで、しかし、いざしっかりと理解しようとすると、よくわからない概念です。
ましてや物理学の授業で
「遠心力という言葉は、本当は存在しない力なのです」
などと言われようものなら、もう訳がわかりません。
今回は、この遠心力について一度見直してみましょう。
意外とふわふわしている「遠心力」という言葉
皆さんは、糸や布を使って重りを回した経験がおありでしょうか。
重りをぐるぐると回すと、重りの回転が速くなるにつれて手が強張り、ぐっと握力を強くしていかないと重りがすっぽ抜けて飛んでいってしまうようになります。
この時に手でかけている力、もしくはかかっている力を、 我々はしばしば日常言語として「遠心力」と呼んでいます。
ほかにも、洗濯機の中の服が槽に張り付くように運動したり、回転テーブルをゆっくり加速していくと、テーブルの中心から離れる方向(動径方向)にものが移動することなど、これらも遠心力と「呼んで」います。
そう、呼んでいるだけです。我々は「力」という言葉を何となく用いる事が多いので、これらの現象を大雑把に「遠心力がかかっている」という表現に押し込めてしまっています。
改めて考えると、この表現はふらふらとしていて、どこか変なのです。
それもそのはずで「遠心力がかかっている」というと、まるで物体が回転する事で、力が発生するように聞こえます。 しかし、物体が動く事で力が発生するというのは、物理的に考えておかしいのです。
例えば、あなたが走る時の事を考えてみてください。
もちろん、走るために、あなたは自分自身を動かすための力を出します。
しかし、そうして走った事で、何か他の物体に及ぼす力が発生するかというと、そんな事はありません。
同様に、遠心力という言葉が使われる場合であれば「円運動」となるでしょうが、これも特別に何か力が発生するかというと、しません。
あくまでこの場合に出てくる力というのは、物体を円運動させるために必要な力だけなのです。
円運動させるための力
では、円運動に関係する力、つまりは本来まっすぐに動くはずの力を、曲げて円に変える力は一体なんなのでしょうか。
この力は、物理用語では「向心力(あるいは求心力)」と呼びます。
物理の基本の話になりますが、物体を加速させる場合には力が必要です。
円運動をさせる場合にもそれは例外ではありません。
何もしなければ、慣性の法則によって等速“直線”運動をするはずの物体を、無理やり捻じ曲げて円運動させるには“力”が必要で、これを向心力と呼びます。
その上で、実は物体を同じ速さで円運動させる時、物体には常に円の中心方向に力をかけないといけません。
もし円運動している物体にかかっている向心力がなくなると、途端に、その時に向いていた方向に等速直進運動を始めます。
「あれ? 物体って力がかかる方向に動くんじゃないのか?」と疑問を持った方もいるかもしれませんね。
力は物体の「運動方向」とその「速さ」を同時に変えます。
動いている物体の軌道がまっすぐでない場合は、本来であれば、力がかかっている方向にまっすぐ等速運動するはずのものを、捻じ曲げるような力がかかっている、ということになります。
例えば物体を投げる時に重力がかかっていない事を考えると良いでしょう。
重力のかかっている方向は下向きであるにも関わらず、物体の軌道は丸みを帯びた、放物線状の形になります。
こういう場合にはベクトルという概念を考えると実は分かりやすいです。
遠心力についての誤解
さて、ここで話を「遠心力」という言葉に戻しましょう。
遠心力はしばしば誤解されている場面がありますが、例としてわかりやすいのはハンマー投げでしょうか。
ハンマー投げでぐるぐる回った後に、ハンマーが遠くまで飛ぶのを見て、これを「遠心力だ」と表現する場合がありますが、これは誤解です。
先述の通り、向心力がなくなった物体はそれ以降、向心力から解放され、まっすぐ動こうとします。
この図のA点を見てください。まさにハンマー投げと同じです。
力が働いているのは、ハンマーをぐるぐる回して、徐々に加速させていく時です。
この時、ハンマーが離れていかないように、選手は自分の体の方に向けて、引きつけるように力をかけます。
これが向心力です。
重りをぐるぐると回してる時にすっぽ抜けないように握力を込めるのも同じですね。
ハンマー投げでは、直線で物体を加速させようとすると長い距離が必要なのを、円運動をさせることで小さい範囲で加速させるためにゆっくりとハンマーを回しながら加速させ、そして、十分加速したのちに手を放すことでハンマーを投げています。
このように円運動を用いて加速させると、小さい領域で物体を加速することが出来るため、例えば粒子加速器なども円形をしていることが多いです。
じゃあ遠心力って?
さて、ここまで長々と書いてきましたが、
では結局、遠心力とはなんなのでしょうか?
実は、この遠心力という言葉は、物理学用語の中では慣性力というものの一種として定義されています。
詳しく説明すると長く難しくなるので、今回は簡単に言うと、
遠心力は回っている人から見た時に「力のように感じるもの」
のことを指します。
例えばあなたの部屋だけが突然回転しだしたとします。
するとあなたは「部屋の中」の同じ位置に居ようとするために、部屋と一緒になって踏ん張って回転軸の方向に向心力をかけなくてはいけません。
ここでのポイントは、部屋の中のあなたは、部屋が回転し出した事を知らない、ということです。
外から見たら、部屋の回転運動に付いていこうとするため、つまり部屋と同じように回転するために踏ん張っているように見えます。
しかし、部屋が回転している事を知らないあなたは、何故か、部屋で静止しようとするために踏ん張らないといけない状況にあります。
この時、あなたは何か力を受けているように「感じる」のです。 そして、この時に感じる力の事を「遠心力」と呼びます。
最後に
というわけで、遠心力の話でした。
最初に触れたように「遠心力」は、様々な現象を無理やり押し込めすぎており、物理的な視点からすると、あまりにふわふわした言葉だと言えます。
こういった曖昧な言葉を少しずつ具体的にしていく事も、物理を勉強する中で非常に重要になってきます。
物理用語としての「遠心力」という言葉自体は「観測者」によって見えたり見えなかったりする力なので、やや抽象度が高く理解が難しいかもしれません。
しかし、今回はとりあえず、
- 円運動をさせるには等速直線運動を捻じ曲げる力が必要である事
- その時の力を「向心力」と呼んでいる事
この2点をまず知ってもらえればと思います。
今回も、難解な物理学の世界、その用語への理解の一助になったのであれば幸いです。
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