初出:2018/10/23 Vol.299 機械王の休日:メノウ乳鉢のススメ
機械王の休日、第18回をお送りいたします。今回は実験器具の乳鉢の話。一口に乳鉢といっても種類があるようで、高級なものには理由があるようです。では本編をどうぞ。
メノウで作られた乳鉢
理科の実験での定番アイテムである乳鉢。固体を粉砕・混和するために使うもので、くられ氏の科学動画などでも、たびたび登場していますね。今回はこの乳鉢について、ちょっとこだわってみます。
さて、一般的な乳鉢というと、お馴染み、真っ白なタイプの物が思い浮かぶことでしょう。1000円程度で購入できるこの白い乳鉢は、基本的にはムライトと呼ばれる素材で出来ています。
ムライトはセラミックスの一種。ムライト以外の素材を使った乳鉢も、人工的に作られているものは基本的に高純度のセラミックスなどが原料です。
一方で、ちょっと高級な乳鉢というものも存在します。それが「メノウ乳鉢」です。その名前の通り、メノウを原料として出来おり、最大の特徴は、天然石であるということです。
メノウ乳鉢の利点
メノウ乳鉢は、ただ高級なだけではありません。きちんとした実験道具らしい利点があります。それが「強度」です。
ムライト乳鉢は、乳鉢と乳棒を擦ると若干量の粉が出てきてしまいます。一方で、メノウ乳鉢は擦っても滑るだけで、粉が出てくる事はありません。
メノウの主成分は二酸化ケイ素ですが、ただの固まりではなく、微細な二酸化ケイ素の結晶が絡まったような構造をしているためか、強い靱性があります。靱性が高いために表面がほぼ剥離せず、従ってメノウで作られた乳鉢からは、ムライト乳鉢のような不純物のコンタミが皆無だと言えるのです。超伝導体の作成など、コンタミを嫌う実験や高価な原料をすり潰すような実験には、メノウ乳鉢が最適な選択でしょう。
また、メノウに含まれる若干の不純物によって、メノウ乳鉢には独特の模様が出ます。天然のメノウが原料であるため、この模様は一品一品ですべて違うのも特徴です。実験器具としての利点はご紹介の通りですが、実験器具マニアとしては、こういった側面からもコレクションに追加したいアイテムだとも言えますね。