初出:2017/08/29 Vol.239 サプリメントってなんだっけ?
改稿:2024/03/28
先生、サプリメントって結局、何なんですか? まるで薬みたいな売り出し方してますが・・・
あくまで健康補助食品であって薬ではないのじゃ! いかにも効きそうな感じで商売してるけどね。
それ、アリなんですか?
いやー、そこはいろいろと抜け道をくぐってるからねー。実に罪深いとは思うよ?
うーむ・・・あ、ほら、これなんか医師の推薦とか書いてますよ。
その写真、同じ名前で写ってるモデルが変わってたはずだよ。
うわ、胡散臭い・・・
というわけで、サプリと抜け道の話を今回はしていこう。
ブルーベリーとか普通にそのまま食べた方が美味しいです。
サプリメントは医薬品ではない
改めて、サプリメントとはなんでしょう? 薬みたいなもの? 食品と薬の間みたいなもの?
サプリメントは食品であって薬ではありません。
そもそも「健康補助食品」というからには、健康を補助する食品というカテゴリーであって、薬効表示をする「医薬品」とは全くの別物です。
しかも医薬品の下には、医薬部外品や化粧品、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品と続き、ようやく「いわゆる健康食品」と「いわゆる」という但し書き付きでランク付けされています。
医薬品や化粧品は万一健康被害が起きた場合、商品の排除命令を国が出したり調査を要請したりと、その商品が「効能」を謳う以上、その責任も強く求められます。
特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品でさえ、何がどういった形でどれだけ含まれているか等、明記しなくてはいけないもので、効果が一切認められていないものは名乗ることができないわけです。
ちなみに、死者を出してしまい大事になった紅麹サプリメントは、この区分けの中では「機能性表示食品」にあたります。
一応、国から安全性や効果等の審査のある特定保健用食品(トクホ)と異なり、消費者庁がOKしたらOKというもので、より審査がガバガバなものが多い印象です。この一件は後半にまとめてあるので気になる方は最後までご覧ください。
サプリメントビジネスの本質
そうしたしがらみから逃れた存在であるにもかかわらず目がよく見えるようになるだの、痩せるだの、メラメラパワーで代謝を亢進するだのというイメージを売りにすること自体が本来はあってはならないのです。
それらのイメージ販売を「※使用者の感想です」で逃げているのが現状です。
薬効を謳うのであれば相応の責任や審査が必要である・・・この基本原則すら破って、食品としての検査・法律の甘さの上にあぐらをかいて、医薬品であるかのような宣伝をする・・・これが日本のサプリメントビジネスの根幹にあるものです。
サプリメントのCMの嘘
サプリメントのCMの内容は大半が嘘とというのも、いくつもの記事で何度も取り上げた通り。
例えばコンドロイチンは放射性マーカーを付けたコンドロイチンの実験で、軟骨中に摂取したコンドロイチン分子が軟骨形成に使われていないことが分かっています。
ビルベリーやブルーベリーが目に良いという話は、以前、亜留間先生の記事にてネット公開されたことで話題になったので見た人も多いでしょう。
これも結局、軍事機密を守るためのデマが一人歩きしたものです。
なおこの記事は亜留間次郎氏の著書からの抜粋なので、他の記事が気になる人はぜひ書籍をご覧ください。
万人に効くサプリメントなどという都合のいいものは存在しない
さておき、ごく稀に、普段の食生活が荒れていることで栄養が欠乏している人が、たまたま欠乏している成分を含んだモノを摂取したことで劇的に改善することなんかは確かにあります。
しかしそれはもともと不健康であるという前提で、個人差ってレベルじゃない話で、それを「この人が効いたから自分にも効く」というのは馬鹿げた発想というわけです。
やはり、以前記事にした、男性機能の低下をサプリメントで・・・なんていうのも、まさしく、足りてない栄養を補うと効果アリ・・・という事例のド真ん中ですし。
ともあれ、サプリメントを盲信するのはまったく馬鹿馬鹿しい話。
本当に効果があるなら、とうの昔に医薬品になっておるわ!(笑)
サプリメントの安全性と怪しげな推薦文
また、安全性については、厚労省がサプリメント成分に関して見識をまとめているサイトもあります。
信頼ある情報が知りたかったらそうしたしっかりとした裏付けのある情報を集約したものを見るのが手っ取り早いです。
また、冒頭の茶番でもちょっと触れたことですが、なんしか権威付けのために医者や研究者を引っ張り出してきて「推薦!」とかやってることがありますが、胡散臭い事例も多々あります。
医師の名前で調べても資格者として出てこないとか、そもそも同じ名前なのに写真のモデルが変わってるとか。
研究資金に困ってる研究室のスポンサーになって、その名前を使うなんてケースもあります。
基礎研究にカネを出さない日本ですが、そういうことをしていると、お金の調達のために・・・ということになります。
そういう研究室の人たちは、ちゃんとお金があるなら、変な金策に手を出さなくても研究ができるのです。
もうちょっとその辺に出し渋らずお金を出してあげようよ、そうじゃないと未来がないよ、って話なんですが、なんともかんとも・・・
ブルーライトをカットする目に良いサプリ・・・?
目に良いサプリだとか、ブルーベリーがどうだとか、みたいな話はお悩み相談動画でも取り上げられました。
結論は本記事で触れた通りです。
「機能性表示食品」の罠・紅麹サプリで健康被害、死亡者も・・・
2024年3月現在、小林製薬の紅麹原料を使った「機能性表示食品」であるサプリによって健康被害が起き、死亡者まで出た事で大事件に発展しています。
そもそもサプリに効果がないことは本記事で解説した通りの話なんですが、今回はその上で、いわゆる「食中毒」にあたる事件に発展した模様。
該当の製品は自主回収になっているようですが、そもそもにして管理がずさんだったり「機能性表示食品」の、当初から指摘されてきた制度的な問題が浮き彫りになった形です。
端的に言えば、トクホ(特定保健用食品)は製品ごとに国の審査があり、その安全性に国のお墨付きがあるので、医薬品的な効果はともかく、食品としては安全な訳です。
一方で、今回のサプリは「機能性表示食品」で、こちらは国のガイドラインに従って事業者が届け出る形になっており、製品ごとに国の審査がある訳ではありません。
この辺、松永和紀先生の解説記事がわかりやすいのでリンクを張っておきます。
ちなみに問題の紅麹サプリを製造していた工場は2023年末に閉鎖されており、立ち入り検査ができず、衛生状態の確認ができない状況だとか……おいおい、なんか急にきな臭いぞ。
なお、食品と薬機法、トクホ・機能性表示食品に関して法的にどうなっているのかは、倫獄先生がツイートでまとめられているので、一連のツリーをぜひご確認ください。
今回の件を受けた消費者庁の専用ページはこちら
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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