初出:2016/06/07 Vol.175 身の回りの毒 #2
改稿:2024/03/29
本日は、意外と身近にある毒の話をお送りしていこうと思う!
毒・・・というと、やはり先生が動画で紹介していたような植物とかですか?
うむ、園芸品種にも毒草はあるからな。まあ、そちらは別に記事があるからそっちを見てもらうとして、今回紹介するのは「カビ毒」だ。
カビといえば、青カビのチーズは私、りりか先生からもらったスティルトンを食べて以来、好物なんですが・・・
一口にカビといっても種類があるからな。そうやって古くから食品に利用されている・・・ブルーチーズもそうだし、鰹節なんかも本枯節はカビを利用しているね。日本酒や味噌・醤油の発酵に使う麹だってカビだし。
そうして考えると本当にカビって身近なものですね。
うむ・・・ただ、人間にとって有用な場合を「発酵」、有害な場合を「腐敗」と呼ぶように、カビも人間に悪さをすることがもちろんあるのだ。黄色くなった米とかヤバい。カビ毒・・・マイコトキシンは加熱殺菌してカビを殺しても、産生した毒素は残るとか、その辺がやっかいなんだよね。
はっはっは。なんだ、焼き払っても毒が残るのか。では今日のところはこの汚物消毒機はしまっておこう。
・・・相変わらず、呼ばなくてもどこからともなくやってきますね、POKA先生。
作った機械を使うタイミングは逃したくないのでな。焼き払ってもダメなら、最初からすべてジェノサイドするこの放射(PPPPPPP)
はいはいはい、コンプラコンプラ、その辺で止めて!
意外と身近にある「毒」
以前、「薬局で売られている毒はあるか」という質問を受けたことがあります。
これに対しての答えは記事にしたこともありますが、薬局で手に入る薬でどうこう、というのは、そうそうできるものではありません。
毒と薬は裏表ではありますが、医師の処方、つまり専門家の知見がなくても手に入るようなものは、それだけ安全性のマージンを高く取っているわけです。
その分、処方薬に比べて効き目が弱いこともあるので、なんかあるなら医者に行けと日頃から申し上げている次第です。保険にお金払ってる訳だし、海外みたいに医療費がめちゃめちゃ高いなんてこともないわけですから。
さておき、今回はそこからの派生で、「では、身の回りにはどんな毒があるのか」という観点から話をしていこうかと思います。
園芸品種にも毒草はある・ペットには注意!
身の回りにある毒物、毒性のあるもの・・・科学の目で見ると意外と毒物というものはありふれています。実際、園芸店に売られているような園芸品種の綺麗な花にも毒草は混じっています。
また、観葉植物にしても、人間には平気でもペットには猛毒、というケースもあり、ユリ科の植物なんかは犬猫にはかなり危険です。
この辺、いずれも個別に記事にまとめてあるので、気になる方は関連記事からどうぞ。
そんなわけで、毒性のある植物は結構その辺にゴロゴロしているわけなのですが、それ以外にも身の回りに危険な毒はあります。
それがカビ毒です。実は筆頭と言えるほど、カビ毒は身近です。
カビ毒の事例・黄変米
具体的なカビ毒の事例を挙げてみましょう。
例えば、一夏、軒下などに放置していて黄変(おうへん)・・・黄色く変色してしまった米。この米を食べるだけで、肝臓がどんどん破壊されて、死に至ることもあるくらい、割と強力な毒が生産されます。
いわゆる「事故米」の一種です。米はペニシリウム属の様々なカビが付くので、100%猛毒とも言い切れないのですが、大半が強力な肝毒性や神経毒性を持ちます。
黄変米については、戦後の食糧難の時代に問題になった事もあったようです。
カビ毒の事例・風呂場のカビ
また風呂場などの黒カビや、赤いヌメリの中にいるカビなども、種類によっては、免疫不全を起こす凄まじい猛毒を生産するフザリウムの仲間などもいて、凶悪といえます。
ただ、こちらは培養条件を限定しないと強烈な毒は生産しないので、そういう意味ではやや安全といえますが、清潔にしておくに越したことはありません。
なお、果実に生えるカビも長期的に服用すると発がん性の高いものが多いので、昔は毒殺に用いられたのではないかという文献もあるようです。
故に少しカビの生えた食べ物は、多少は食べても平気ですが、毎日食べていると健康リスクがあると言えるわけです。
カビの有害無害は見分けづらい
カビといっても真菌、無害な菌と有毒な菌は、区別が極めて難しく、例えば、アフラトキシンを生産するアスペルギルス・フラブスと、醤油や味噌のコウジカビは同じ仲間なので、顕微鏡での見た目はほぼ同じです。
故に培養してそれらを分析したり動物実験、または紫外線での発光のスペクトルを見て・・・などの解析をして初めて有害なものかどうか分かります。
そういう意味で、毒性株を抽出して、それを純培養、そこから毒物を抽出しなければ・・・という意味では、最も生活に近い毒物でありながらも、最も縁遠い毒物というのがカビ毒といえるでしょう。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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