初出:2015/09/29 Vol.139 美味しい毒キノコ
改稿:2024/10/15
本日は秋の味覚、キノコについてである! せっかくだからキノコと野草の汁物を作ってみたぞ!
わあ、すごく美味しそうですね・・・使われてる材料が気になりますが。
今回はトリカブトじゃなくてちゃんとニリンソウだから・・・
なら大丈夫ですね。いただきます・・・うん、大変美味しいですね。特に出汁が濃厚で、あまり味わったことのない感じ。
そうか、それは良かった。テングタケからはとても良い出汁が出るんだよね。食べすぎるとヤバいけど、これくらいの量なら・・・
うっ・・・なんだかめまいが・・・んふんふ・・・(ブクブクブクブク)
ダメだったかー・・・
※フィクションです。くれぐれも真似しないように!
秋の味覚、キノコ
秋の味覚にも色々ありますが、秋といえばキノコ狩りのシーズンであり、キノコを鍋なんかにして食べるのに良い時期ですね。
キノコと一口にいっても、その辺のスーパーでも流通しているものだけでも、シイタケ、ブナシメジ、マイタケ、エノキ、エリンギ、ナメコなどなど、たくさんあります。
このうち、実はエリンギは、初めて人工栽培されたのが1993年と比較的近年で、日本では自生していないこともあり、それまではこうした「その辺で売ってるキノコ」ではなかったりしました。
スーパーで売ってるキノコは「努力の結晶」
何気ないことですが、今では当たり前のことでも、「当たり前」にすべく努力した人たちがいて、という話ですね。
ともあれ、こうして流通しているキノコは食べても安全なものですが、もちろん、食べると危ないキノコも山ほどあります。
キノコ狩りで間違って毒キノコを採取してしまい、中毒を起こして死亡した・・・なんてニュースを聞いた覚えもあるのではないでしょうか。
しかし、毒キノコの中にも、実は美味しいキノコがあります。もちろんオススメはできませんけど。
ある意味究極のグルメ「テングタケ」
「キノコの中でも最も美味しい出汁が取れるものは?」
もしこう聞かれたら、自分は真っ先に「テングタケ(ベニテングタケ/イボテングタケ)」と答えます。
日本では、スーパーマリオ的なベニテングタケと茶色に白い斑点のイボテングタケが生え、図鑑などでは毒キノコであると紹介されています。
毒性分は副交感神経刺激性のムスカリンで、発汗、嘔吐、下痢(腸液過剰分泌)などの副交感神経支配の分泌物がデロデロ出まくって不具合が生じるというものです。
テングタケのムスカリンの分量はアセタケやカヤタケといった同種の毒を含む毒キノコに比べると極めて低く、1、2本までなら食べても大丈夫・・・と言われています(ただし、テングタケの仲間は猛毒のキノコも多いので素人判断は極めて危険です)。
毒キノコの成分にあるうま味
さらに、このテングタケには、ムスカリンの他に、イボテン酸、その分解物であるムッシモールが含まれており、これらのアミノ酸が凄まじいうま味を持っているため、他に類を見ない「うま味」を持ったキノコとなっています。
あまりにうま味が強いため、干したキノコを囓ると、ジャコやスルメを食べているかのような錯覚を覚えるくらいに味が濃厚です。
イボテン酸にも幻覚毒性がある
味のタイプとしては、テングタケの味としか言いようが無く、好みこそありますが、かなり美味しい部類です。系統的には臭みのない魚介系の出汁といえます。
しかし、イボテン酸自体も中枢神経に働く幻覚毒性があるため、やはり大量に食べるとよろしくないわけで、化学調味料などとして合成されて使われることはありません。
そう聞くと食べてみたくなる人もいるかもしれません。しかし、同じテングタケでも、地域や種類によってイボテン酸の含有量が異なる事もあり、中毒死の危険があります。
よって、不用意に食べる事は避けましょう。フリじゃないぞ。真似しても責任は持てないからな!
※ご指摘を受け、一部表記を修正しました。
亜留間先生の毒キノコ講座
・・・と、毒キノコは美味しいのもある、なんて話を何年も前にしたわけですが、亜留間先生曰く「昔のロシア人は毒キノコも毒抜きして食べてた」そうです。
ただし毒と一緒に旨味も抜けてしまうので、濃厚な味わいはなくなるそうで・・・
その辺を詳細に語った記事がトカナで公開されているので、気になる人はぜひ。
まあ、日本人もフグみたいな毒魚を毒に当たらないようにしたり、毒のある部位も毒抜きして食べたりしてるんで、昔のロシア人のことは言えないかも(笑)
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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