初出:2020/03/17 Vol.372 薬局にある痛み止め
改稿:2023/05/11
うぬぬぬ・・・頭が痛い・・・
おや、頭痛かね? 痛み止めでも飲んだらどう?
そうですね・・・でも、薬局で売ってる痛み止めもやたら種類あって、いつも悩むんですよね。
うむ・・・しかし、実は成分で見ると、割と絞り込みができる。それを踏まえて使い分けや注意点を知っておくと、薬を選ぶ上で役立つぞ。
へぇ〜〜、そうなんですか。
古くはアスピリン、そして今の定番成分アセトアミノフェン、他にもイブプロフェンとか、組み合わせでよく見かけるイソプロピルアンチピリンとかエテンザミドとか、あと別系統だとブチルスコポラミン・・・ああ、やはり効果が高いというならロキソプロフェンナトリウムが・・・
すみません、より頭痛がひどくなってきました。もうちょい噛み砕いて説明を・・・
では、今日は成分から見る痛み止めの紹介をしよう。
はっはっは。究極の痛み止めならここにあるぞ! それも即効性だ!
露骨にドクロマーク付きじゃないですか・・・なんですか、死ねばもう痛くないとかそういうのですか?
はっはっは。痛みを感じなければそれでいいではないか!
薬局で痛み止めを買う時、何を選ぶ?
頭が痛い、肩が痛い・・・なんて理由で痛み止めを求めて薬局に行く人が多いでしょう。
しかし棚にずらーっと並ぶ薬に、どれがいいんじゃろ・・・ってなって、有名所をとりあえず買う・・・という感じの人が多いかと思います。
もちろん、本当にヤバい場合は、薬局で売ってる薬で誤魔化さずに医者にいくのが最善ですが、なかなかそうもいかんものです。
であるならば、薬局売りの薬の中で、一番「適材適所」となる薬を選ぶのが良いでしょう。
今回は、痛み止めの「成分」について紹介します。どれがいいのか、薬局で選ぶ際の参考になれば幸い。
処方薬は幅広いが、薬局売りは意外と種類が少ない
医薬(処方箋医薬品や医薬用医薬品)では、これらのクスリ、痛み止めは解熱鎮痛薬と呼びます。
アントラニル酸系だの、アリール酸系だの、やれプロピオン酸系だの用法と種類も多彩で、医療従事者の頭を悩ますたくさーんの種類のある薬剤群です。
しかし、こと薬局で買えるクスリ・・・という話に限定すると、なんと、わずか数種類の成分しかないため、薬に詳しくない人でも覚えきれるレベルです。
これらの薬局にある内服用痛み止めの大半の成分は古いものなのですが、有効に働く成分も多いので、その薬剤ごとの使い分け、注意点を知っておけば、痛み別に見事に使い分けができるということです。
アスピリン(アセチルサリチル酸)
アスピリンというのはもともとは商標登録であり、本来の名前はアセチルサリチル酸というもので、クスリによっては成分表示名がアスピリンであったり、アセチルサリチル酸であったりするのだが同一成分。
クスリとしては100年以上の歴史のあるもので、完全合成された始めての医薬品として知られています。
アスピリンはダイバッファーが含まれているバファリンでさえ、やはり胃への負担はゼロではなく、胃の弱い人は注意が必要です。
なお、アスピリンという名前ですが、他の〜ピリンという薬とは違ってピリン系ではないのでピリンアレルギーの人でも使うことができます。鎮痛効果は並。
15歳以下の人はライ症候群などの強い副作用を起こす危険性があるため、飲まない方が良いとされているので、お子さんが居る場合は、うっかり飲まないように薬箱に置いておかないほうがいいかもしれません。
アセトアミノフェン(定番!)
鎮痛作用も解熱作用も高く、さらに副作用らしい副作用もまず無いと良いことづくめなので、十数年前から、アスピリンを押しのけて、解熱鎮痛成分といえばコレ・・・という定番の位置にあるクスリがこのアセトアミノフェン。
注意が必要なのは飲みすぎ。胃に負担が無いからとガンガン飲んでいると、肝臓が代謝できる限界を超えると急激に毒性を持つために、説明書に書かれた分量以上飲まないように注意が必要です。
また風邪薬にも多く含まれているので、頭痛薬に風邪薬を飲んで・・・というだけで許容量を超えてしまうこともあるので気をつけましょう。
また、酒によって毒作用が出る危険性があがるので、酒との併用は原則やめておいたほうがいい。
とはいえ、それ以外はとりわけ注意は必要の無い薬で安全であり効果もアスピリンより高いという人が多く、作用機構が少し違うので、併せて飲むと効果が高まることも。
実際、アスピリンと組み合わせて売られている薬もあります。
イソプロピルアンチピリン
ピリン系の痛み止め。かつて風邪薬を飲んで蕁麻疹や紅斑が現れたことがある人は飲むことが出来ないが、それ以外の人には効果の高い薬剤。
イソプロピルアンチピリンが好まれるのは、かつて多く使われていた他のピリン系の薬剤に比べ、アレルギーを仮に起こしてもその作用が激化しにくいという配慮から、最近はピリン系といえばこの成分になっています。
薬局薬の痛み止めの成分の中ではロキソプロフェンに次いで強く、効果は高いです。
頭痛薬では塩野義製薬のセデスハイが人気なのは、この成分にアセトアミノフェンがさらに入っているため、鎮痛効果がかなり高い。また、あまり知られていないがセミドン顆粒(全薬工業)というのもあり、セデスハイよりさらに鎮痛成分が多く配合されています。
イブプロフェン
イブプロフェンは、エスエス製薬の「イブ」の代表的な成分で、アスピリンより強い鎮痛効果をもちます。ただし胃への負担も同様にあるので、きちんと説明書の通り食後に服用するなどの注意が必要です。
ごくまれに湿疹やかゆみ、めまい、喘息などの呼吸症状の副作用を起こすことが知られています。喘息持ちや喘息家系の人で呼吸器が弱い人は避けたほうがいいかもしれません。
エテンザミド
アスピリンの効果はそのままに胃への負担を下げることを念頭に開発された薬。こちらはライ症候群の危険性はないため、アスピリンに近いとはいえ、15歳以下でも服用しても大丈夫です。
アクラスの「ノーシン」シリーズがACE処方(アセトアミノフェン・カフェイン・エテンザミド)として、単品ではなく合わせ成分として使われていることが多いです。それ以外の効果はアスピリンに準じます。
ロキソプロフェンナトリウム(薬局売り最強!)
ロキソニンのことです。
2011年から薬局売りされるようになった新顔で市販薬最強の成分。系統的にはイブプロフェンの上位版であり、現在薬局で買える痛み止めの中ではぶっちぎって最強の効力を持ちます。
胃粘膜を荒らすこともあるので、処方される場合は胃粘膜を保護する薬、市販薬であればエーザイの「セルベール」(テプレノン)などと併用されることもあります。
が、しかし、淡島りりか先生いわく「実は他のNSAIDsより胃粘膜へのダメージは少ない」そうです。
またガスターなどのH2ブロッカーとの相性は場合によっては良くないので、原則避けておきましょう。
他の薬にも言えることですが、飲み合わせに問題が出ることもあるので、病院に行った際、飲んでいる薬には必ず報告するのが大切です。
ブチルスコポラミン(生理痛に効果アリ!)
薬局の痛み止めの中では別系統の「鎮痙剤(ちんけいざい)」というカテゴリーの薬です。ブスコパンが有名。
内臓の収縮などで起こる痛みなどに効果があります。どういう痛みかというと、ご飯を食べた後無理に走ったりしてお腹が引きつるような痛みを感じた人はいるとおもいます・・・アレです。
代表的なのが生理痛(生理痛は複数の痛みによるものですがその一部)で子宮という内臓が収縮することによって起きる内臓痛です。
内臓の多くには痛神経がないため、内臓の異常は異常な収縮を体が感知すると、脳に信号を送り、そこで始めて「痛い」と認識される(かなり乱暴な説明なので一部語弊がありますがご勘弁を)痛みです。
これらは先ほど紹介した痛み止めは効果が低く、内臓痛のクスリを併用することで覿面に改善することがあります。
最近はエルペインといったこの成分を含んだ生理痛専用の薬も売られていますが、売り切れだった場合、ブスコパンと他の痛み止めの併用で抑えるなんてこともありなわけです。
ひどい生理痛に悩まされている場合は・・・
生理の辛さは個人差が大きく、軽い人もいればひどく重い人もいます。そして、あまりに生理痛が辛い場合、実は病気だった、ということも考えられるので、無理に我慢しないで産婦人科にかかることをオススメします。
一方で、低容量ピルを使って生理そのものをある程度コントロールする方法もあります。
これについてはりりか先生が動画で詳細に解説されているので、ぜひご参考にしてください。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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