初出:2017/08/22 Vol.238 体温の調整と熱中症
改稿:2024/07/05
暑いっすね・・・まるで蒸し風呂の中にいるようなんですが・・・
まあその全身真っ黒な格好じゃそりゃ暑いよな。それを差し引いても温度がヤバいが。
室内の温度は37度・・・サウナに短時間いるより、体温くらいの温度の中にずっといる方がヤバいと、他ならぬ先生から聞いた覚えがあるんですが。
うむ。今日はその辺の話をしようかと思っているのだが・・・この状況下でエアコンを使えないのは割と命に関わるんだが、こういう時に限って故障していてだな。
はっはっは。いやーすまんな。大型発電機のボイラーを試していたら色々吹っ飛んでしまってな! おかげでそこらじゅうひどいことになってしまってな。何、エアコンはすぐに修理しよう!
いや、もう業者に手配かけてるから・・・というか、そんな爆発に巻き込まれて大丈夫なのか? 火傷してない?
はっはっは。はっはっは・・・ははは・・・(バタリ)
ダメじゃないですか! 救急車ーーー!
※茶番はさておき、熱中症対策に水分は十分に摂りましょう。
また、気化熱タオルなんかもオススメです。ミント系は体温自体は下がらないのでダメ。
短時間サウナと長時間猛暑、どっちがヤバい?
連日のように酷暑が続きます。熱中症にはお気を付けて・・・というのはお天気ニュースの常套句ですね。
この熱中症とは何が起こってるのか、それを知っていると知っていないでは、危機感が全然変わります。
- 気温50度のサウナで汗をだらだら流しながら我慢大会30分
- 気温37度の部屋で扇風機にあたってゴロゴロ数時間
どちらが熱中症の危険が高いでしょうか?
印象とは異なる実情
印象だけで「サウナ」と答える人も多いでしょう。実際、サウナで我慢大会やって死者が出たなんて話もありますしね。
しかし、答え、つまり実際に危険が高いのは「気温37度の部屋で扇風機にあたってゴロゴロ数時間」です。
率直に言って、死にかねない状況です。これは体温調節が機能しているかどうか、という問題になります。
というわけで今回は、熱中症と体温調節について触れていこうと思います。
臓器や中枢神経の温度「深部体温」
ご存じの通り人間は恒温動物で、生涯体温を36ー39度という極めて狭い範囲で温度管理することで生きているわけです。
体温というと、温度計で測ったりする体表面の温度のことばかり連想しがちですが、この場合は体の内部、臓器や中枢神経の温度、つまり「深部体温」を指していると今は考えてください。
この深部体温が、上がりすぎたり下がりすぎたりしてしまったとき、人間の生命活動自体がダウンしかねない危機的状況になるわけです。
深部体温は、臓器や中枢神経といった、人間の生命活動を支える核心部と言われる部分の温度です。
体温調節の仕組み
例えば寒冷環境に行くと、末梢の体温(外郭部という)は30度前後まで下がります。
それは、体内がいつものように血液を循環させて熱をくまなく配っていくと深部体温まで低下させて、臓器の働きを失わせる可能性があるからです。
なので寒冷地では、血液の循環を減らして組織が劣化しない程度のぎりぎりの熱交換にしようというわけです。
このため、まず核心部の体温の保持が最優先になり、抹消の手足の指までにはフォローが行かなくなって、低温と血行不良により凍りついて凍傷を起こしたりする訳ですね。
寒冷地の哺乳類が大型化するのも、大きくなれば核心部の体温を少ない表面積で守ることができるからという理屈になります。
なのでアザラシなんかはご存じの通りマルマルとしてるわけです。
体温の調整維持に必要なカロリー
逆に熱い場所にいると、今度は血管の血液量、末梢の毛細血管のレベルまで血の循環を増やして末梢の熱を増やして放散させて汗などの気化熱で熱を捨てようとします。
こうした恒常性の維持に、人間の食べた食物のカロリーの8割が使われており、成人では1日1400〜1500kcalになります。基礎代謝と呼ばれる、何もしなくても消費するエネルギーです。
これは普通にしてての場合の話で、これが肉体労働とかになってくると、消費カロリーは3、4倍になります。
故に、肉体労働者は山盛り食べても太らない上に、熱を大量に生み出してしまう筋肉量も多いので、その分、消費カロリーも増えるという訳です。
食わないと体が持たない、という奴ですね。さらに言うなら、ダイエットに運動が必須なのも、運動によるカロリー消費が目的なのではなく、筋肉をつけて基礎代謝を増やそう、と、そういう訳なのです。
体温を下げられない=死の危険
そうした機能がある中に、体温と同程度の気温にずっといるというのは、体温を外部に捨てることができないという意味になります。
つまり体は何もしなくても熱を生産し、その熱を捨てる場所がないため、どんどん熱が溜まっていき、熱中症となるわけです。
従って、熱帯夜にクーラーを寝入る前にタイマーで1時間程度にしておいて熱が籠もる状況で寝ているのは危ない・・・というわけです。
なので適度なクーラーの利用は命を守るためにも大事です。
もしも熱中症になってしまったら?
その上で、もし熱中症になってしまったら、そんな時の応急処置の仕方は、覚えておいて損はありません。
水分・塩分の補給が大事なのはみんな知っての通りだと思いますが、第一優先は、まずは涼しい場所に避難することです。
そして、服を緩めて、首、脇の下、太ももの内側の付け根を氷嚢など、なんならコンビニの氷とかでもいいので、冷やします。太い血管が通っている場所を冷やす事で効率をよくする訳ですね。
水分・塩分の補給などは、それからです。自力で水を飲めない場合や、そもそも意識がない場合は、応急処置の前にまず救急車を呼びましょう。
環境省の以下のサイトなどもご参考にどうぞ。
余談・自称ミニマリストに思うこと
ここから先は余談です。自称ミニマリストとかいう、モノを持たない主義の人がいますね。
自分にとって必要な、最小限のモノだけを持ち、不必要に持ちすぎないようにすることで、逆に豊かな生活をおくれる、みたいなそういう思想の方です。
その上で「暑い日はどうする」という質問に「図書館などの公共施設で涼む」という回答を見て「それはただの乞食やろ」と失笑したことがあります。
もちろんそういう人達すべてがとは言いませんが、これでは、ただあらゆるものをケチっているだけ、物質的にも精神的にも貧しい、という誹りを免れないでしょう。
冷房をケチった結果・・・
自分の知恵で乗り切るなら、水を入れた桶に足をいれるとか、水をかぶって扇風機にあたるとか、そういう工夫で乗り越えろやボケナスと思ったり(笑)。
そういうトンデモ一歩手前の人の妄言を真に受けて、暑い時期に冷房をケチって熱中症になったりしないようにくれぐれも気を付けましょう。
重度の熱中症で救急搬送されてそのまま入院したら、場合によっては10万円以上のお金がかかります。冷房を入れるのとどちらが安いのかは考えるまでもないだと思うんですけどね。
また、健康や命はお金では買えません。自分の命まで捨てる究極のミニマリストにはならないようにご注意を。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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