初出:2025/02/17
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ふーん、遺骨・遺灰からダイヤモンドを作るサービスねえ。
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はっはっは! ダイヤか! ヤスリや砥石には良いな!
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いや、流石に遺灰から作った奴を工具に使うのはちょっと・・・
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しかし、そもそも本当に遺灰由来のダイヤが作れるのか、少々疑問だな!
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そうねえ。その辺、ちょっとSNSでも話題になっていたし、すこし考察してみよう。
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そうだな、そうであればまずは実験だ!
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POKA先生、火炎放射器を構えて何をするつもりですか!?
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無論、灰にするためだ! ファイヤーーー!!
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あっち、熱っ、アッヅァモルスァ!!
遺灰からダイヤモンドを作るサービスを検証
遺灰をダイヤモンドにするというサービスがある。
ちょっと検索してみると、数十万〜数百万で、芥子粒程度から1カラット程度のダイヤモンドまで作ってアクセサリーにしてくれるらしい。
ダイヤモンドの製法は、高温高圧(HPHT)法や化学気相蒸着(CVD)法や爆発衝撃圧縮法など、いずれも高エネルギーを用いた製法なので、大規模な設備が必要になります。
WEBサイトによると天然ダイヤモンドの生成条件に近い環境を人為的に作り合成する高温高圧法(HPHT)を用いているようです。
人間の遺灰は、日本では1000℃近い高圧ガスバーナーで焼きますが、当然炭や、骨が焼け残ります。遺灰は、燃えた骨・・・リン酸カルシウムと燃え残りの炭で、厳密にはその周りの炭からでしか、ダイヤモンドは作れません。
なので遺骨ダイヤモンドではなく、遺灰の中の炭素を集めて作るダイヤモンドといえます。
本当に遺灰由来のダイヤなのか?
方法的には遺灰をしっかり酸洗浄して、残った炭をダイヤモンド製造工程に回せば、理論上はダイヤモンドを作ることは可能・・・が、火葬時にはけっこう色々なものを入れて焼くので、そこに残っている炭がそもそも本人由来かどうかは判別は不能です。
棺桶かもしれませんし、一緒に燃やしたCDかもしれませんし、ただの燃油の燃えかすかもしれません。
そしてなにより、ダイヤを合成するにはその分の炭素だけでなく、目的とする宝石の重さの何百倍ないし何千のオーダーで炭素が必要なので、遺灰だけで賄えるのかはかなり謎です。
実際は材料となる炭に、遺灰由来の炭素を混ぜ込んで・・・とかだとは思いますが、それが遺灰由来のダイヤになっているかはもはや誰にも判別はできません。
ダイヤモンドを構成する炭素の同位体比(12Cと14C)の比率を遺灰で計測し、出来上がったダイヤモンドに含まれる比率を比較する・・・とか、しか判別方法は思いつきません。費用的にもかなり高い上に一般人が鑑定結果を確かめられないため、現実的ではないでしょう。
この判別が不能というのがくせ者で、結局は、業者の言うことを信じるしかない・・・というところです。
値段的にも、設備さえあれば、1カラット合成にかかる費用は数万円程度と言われているので、そこから研磨やなんやらの工程を入れると数十万〜数百万というのも、まぁ納得の感じはありますが。
まさかダイヤモンドと称してモアッサナイトが来るとか、そういう露骨な証拠のあるウソ(というか景品表示違反)でもない限り、詐欺とは断定はできないですね。
まぁこの辺の商売は基本的にはお気持ちビジネスなので、客と会社が納得していれば良いとは思います。一言で詐欺とは断定はできませんし、センシティブなモノなので、外野がヤイヤイ言うのもなぁ・・・と思いつつ。
・・・・・・自分は使いませんが。
著者紹介
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作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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