初出:2018/12/11 Vol.306 本の裏話 同人誌と商業誌 続き
改稿:2022/04/26
本の裏話、続きは商業出版物のメリットについて、である!
何のメリットもないなら、ものすごい手間をかけて本作る甲斐もありませんからね。
その通り。商業でやるメリットや、紙の本にある魅力というものがやっぱりあるからね。
一方で、情報伝達速度ではネットが発達した今じゃどうやっても勝負になんないですからね。
ネットどころか携帯電話もなかった頃なら雑誌の情報が最新なんてこともあるだろうけど、もうそういう時代じゃないからなー。
商業出版物の厳しい現状
さて、本の裏話、続きは出版業界と表現、という観点から見ていこうかと思います。
前回は利益の話をしました。
この点だけを見れば同人誌の方が儲かる訳ですが、ただそもそも、今や、紙の本というもので、利益を上げていく時代は、もはや過渡期を過ぎたものである、という意見もあります。
スピードでは電子メディアに負ける
確かに未だに何百万部という売り上げを出す本はありますが、全体部数としては当然下がってきています。
「海賊版が悪い」「子どもの活字離れ」とか、理由を付ければいくらでもあるのですが、もっとシンプルな理由だと自分は思っています。
それは、単純に競合するメディアが増えて、スピーディな展開では電子メディアに完全に押し負けたから、です。
紙の本を作るのには手間がかかる
最新ニュースを原稿にして、それを校閲し、デザイナーがカッコいいレイアウトに流し込み、それを編集者が何度もチェックし、印刷所で紙に印刷される・・・。
紙の本でニュースを伝えるのには、これだけの手間がかかります。
情報を伝えるだけであれば、ネットのほうが一足であり、関わる人間も少ないので人件費も圧縮できますし、なにより早い。
SNSによる情報伝達の恐ろしい速さによって、商業のニュースサイトでさえ今や遅いと言われる中、商業出版物で「ホットニュース」を配信するのは正直無理ゲーなのです。
故に雑誌が廃れるのは当然・・・本当に良いこと無しの商業出版物に見えますが、そうでもない点もあります。
商業出版物のメリット
表現の自由が認められること
商業出版物のメリット、それは、まず表現にある程度の自由が認められることです。
いえ、本来は当たり前に認められるべきことなのですが、自分は出版物の世界でずっとその辺とやりあってきており、実際にはとても危ういものだということに実感を持っています。
ア理科でさえ現在の基準では、犯罪幇助だの、武器製造指南など、いくらでも表現規制的な言いがかりを付けることが出来るわけで、実際に有害図書指定も食らっています。
しかし、それを言い出すと、この世の全ての技術書は悪用したらアウトなわけで、そもそも論がおかしいことになります。
表現の自由以上に、知る権利の自由もあるわけで、そうしたものを「感情論」で封印することは非常に危険なことです。
これが行き過ぎたものが極端な国粋主義だったりファシズムなどの台頭のきっかけとなります。
出版社を通して得られるメリットがある
そんなただのエロ規制や表現規制程度が・・・と思う人は歴史を勉強してみてください。ファシズムのきっかけは魔女狩りです。
そして出版社というモノを介していないだけで、同人誌は個人出版物なので個別に撃破されやすくなります。個人では、公権力にはとても勝てるものではないのです。
次に、商業出版物はISBNコードで管理され、なんやかんやで図書館や国会図書館に収蔵され、歴史に残るということです。
自分の生み出した怪物「危ない28号」も国会図書館に収蔵されていたりします(笑)。ようするに古くから存在するので業界団体がそれなりに機能して、それなりにモノが残る世界になっているということ。個人が作っているモノは残りにくいと言えます。
電子の本にはない、紙の本ならではの良いところ
最後に・・・紙の本が個人的に一番大事だと思うこと。
それはパラ見できることです。
検索機能も無い紙の分厚い本は一見非効率的な媒体に見えますが、情報密度は圧倒的で、電子の本では拡大して読まねばならないものも、紙だと表示は簡単です。
またなんとなくパラ見したり、何冊も開いて資料とする・・・ことも電子では非常に難しく、事典などはデータが重すぎてそもそもタブレットの動作が重くなるレベルで閲覧もサクサクとはいきません。
このあたりは次第に液晶(ないしELディスプレイ)、CPUの進歩などでカバーされるかもしれませんが、現時点では紙の圧倒的便利さだと言える点だと思います。
自分も漫画も紙で買っているものと電子版で追いかけているもの、双方あります。
ただ紙の漫画は、リビングでごろごろして手を伸ばしてまとめて取って机にころがして、そしてゴロゴロしながら自分のペースで楽しむ・・・ことができるのはやっぱり紙かなぁ・・・と思います。
これに関しては自分が古いだけかもですが(笑)
有害図書指定って何なの?
前回でもチラリと触れ、今回でも商業出版物のメリットとして紹介した表現の自由。
アリエナイ理科シリーズはかなりの配慮をしているのですが、残念な事に有害図書指定を受けることもあります。
この有害図書指定っていうのは何なのか、というのは動画で紹介しているので、ぜひご覧ください。
有害図書指定への思うところは「アリエナイ理科ノ大事典 改訂版」のあとがきで触れています。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
「アリエナクナイ科学ノ教科書2」好評発売中です!
新刊「マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座 教えて!夜子先生」好評発売中です!
関連記事・動画
前回の記事はこちら
有害図書指定ってなんなの?
今まで出した関連書籍一覧は以下よりご確認いただけます。
宣伝
ニコニコ動画にて有料チャンネル「科学はすべてを解決する!! ニコニコ秘密基地」を開設しました!
「アリエナイ理科式世界征服マニュアル」が改訂版となって新発売されます!
「アリエナイ医学事典2」好評発売中です!
「アリエナイ医学事典 改訂版」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典3」、好評発売中です!
くられ先生の単著「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
工作系に特化した「アリエナイ工作事典」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典」改訂版が発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典2」、好評発売中です。