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【紅麹サプリ問題】プベルル酸って結局なんだったの?:くられ

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例の紅麹サプリ問題の話をしましょう

はいコンニチワ。ニコニコの復活にはまだ時間がかかりそうなので、率先垂範の精神で書き下ろし原稿を古巣のポータルで公開するくられ先生です。

この記事はもともと有料を想定したものなので、再掲記事同様、有料チャンネルが復活したらそちらで改めて公開し、その後は非公開になる予定なので、今のうちにぜひ読んじゃってください。

さておき、今回は件のサプリメントの話で、報道は一端落ち着いたプベルル酸問題です。

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毒性の原因は「プベルル酸」だった

小林製薬の紅麹を使用したサプリメントに「未知の成分」が含まれていたことで健康被害が続出して調査が開始されました。その後、厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所なども毒性の調査を行い、

プベルル酸が毒性の原因であったことが確認された

というのが現在の流れです。

当初は紅麹菌の中には「シトリニン」という腎臓毒性のある成分を作るモノが知られていたので、こちらが原因かと思われていました。
しかし調査の結果わかったのは「プベルル酸」が原因だったということで、これはなんらかの形で青カビの仲間(ペニシリウムの仲間)が生産する抗菌成分の1つ。
人間にも強い毒性を持つため抗生剤としては使えず、またマラリア原虫に効果があるため、マラリアの治療薬として研究もされていた成分です。

構造式をみると、炭素で七員環(七角形)構造をとっており、天然化合物では、ヒノキチオールが似たような七員環構造を持ちます。
生物由来の毒物といえば、ふぐ毒のテトロドトキシンや、キノコ毒のアマトキシンなど、基本的に複雑な構造をしてるものが多くて、毒性を発揮する標的も分かっているものが多いのですが……

しかし、今回のプベルル酸はこれといった特徴の無い有機酸で、分子構造を見る限り「強い毒性」があるとは俄には思えません。

そんなプベルル酸、いろいろな情報が揃ってきたので、今のところをまとめておきましょう。

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腎臓に悪影響があるのはわかったけど……

プベルル酸は、腎臓に重大な悪影響を及ぼす事がわかりました。

腎臓というのは、血液を濾過し、余分な水分や廃物を尿として排出する重要な臓器で、キドニービーンのキドニーはこの腎臓の形に似てるから由来してます。

腎臓は血液を濾す臓器です。よって、血液に溶け込んで、腎臓で回収されて腎臓の細胞に毒性を及ぼす場合、覿面に毒性が出るのが特徴。
カビやキノコなどの真菌が作り出す毒素は、胃から吸収されて肝臓でも代謝されずに血中に出て悪さをする毒がけっこうあります。
有名なのはドクフウセンタケなどに見られるマイコトキシンであり、オレラニンは、腎臓で濾されて腎臓に留まるといろいろな反応をして活性酸素を出して細胞を攻撃するという毒性があり、急性腎不全を起こすことが知られています。

一方で、プベルル酸は、青カビが作る毒素なので、真菌生産のものですが、オレラニンなどのマイコトキシンとは明らかに異なる、平凡すぎる見た目のトロポノイド系化合物で、毒性がまったく見えないです。

腎臓で有害性を示す可能性としては、ミトコンドリアなどの細胞内小器官が標的になり、

機能不全を起こすことで細胞死を起こす
免疫細胞となんらかの衝突をして腎臓の細胞で炎症を引き起こす
不安定な七員環構造なので、それらが開環し化学反応を起こすときに活性酸素を生み出し、それが細胞に物理的なダメージを与える

……等が考えられますが、不明です。

プベルル酸は、腎臓に重大な悪影響を及ぼす、と言いました。
現在は、その点しかはっきりしていません。
マジでそれくらいしか情報がないのが現状です。

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マジわかんなくてドヤれなかった件

正直なところ、最初にニュースで発表を聞いたとき、

「はぁ?」と言う感じで、当然聞いたこともない化合物で。
なおかつ分子構造を見て、再度「はぁ?」でした。

マジで1ミリも類似化合物が思いつかない。

ヒノキチオールがなんか似たような感じだったかとか、アズレンが七員環だっけか……くらいの頭で、これがどういう毒性をもつのかは、俄には信じられませんでした。
なんなら「こんな物質で大規模中毒起きるのか??」というくらいの認識でした。

なんでまぁだいたい毒物系ニュースが話題になったときは、我先にと、ドヤったツイートをしてると思うのですが、プベルル酸に関しては、マジでなんもわからないので、何も言えなかったというのをここで白状しておきます。

自分の薬の知識は「薬がみえる」シリーズ、「薬がわかる構造式集」「薬の顔」あたりで学んだ構造活性相関の知識なんですが、

だいたい「あーなんかコレ見たことアル」からの、ぼんやりと作用機序が……

って話なのですが、

プベルル酸はそれがなかったという感じですね(笑)。

とはいえ、薬の構造の知識も最近ぜんぜんやりなおしてなかったから、気がつけばドンドン抜けてていて、久しぶりに見直して、「へぇそうなんだ」となってるので、使わない知識はどんどん衰えますね……

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著者紹介

くられ
くられ

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku

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