初出:2020/03/10 Vol.371 身の回りのもので出来る炎色反応実験
改稿:2023/12/09
今回は、身の回りのものを使った「炎色反応」の実験をご紹介しよう!
おお、なんか理科の授業っぽいですね!
なんてことのない化学の基礎であるが、それだけに、入り口としては良いものだと思うのだよ。
いつも危ないことばかりやってるようで、たまにはこういうのもやるんですね、先生。
いつも爆発とか爆音とか雷とかそういうのばっかりってわけでも・・・あるな(笑)。某機械王が絡むと・・・
はっはっは。呼んだか? せっかく火を使うなら、もっと派手にやろうではないか。何、準備はしてあるぞ!(ガシッ!)
絵に描いたような藪蛇ですね。くわばらくわばら・・・
たかがアルコールランプでも、火を使う実験をする時は防火対策を忘れずに・・・ちょっと、引きずるのはやめて(ズルズル)
アルコールランプに緑の炎を灯す
炎色反応。
アリエナイ理科ノ大事典などでも、炎の色を変える実験を多く紹介しています。
そんな実験、ちょっと試してみたいという人も多いでしょう。しかし薬品は手に入らないし、難しい・・・
いえいえ、アルコールランプとアルコールを買ってくれば、あとは簡単にできる、緑の炎の実験というものがあります。
分かっている人には本当になんてことのないホウ素の炎色反応ですが、化学を始めたばかりの人には、化学の面白さを伝えるには十分すぎる魅力を持っているので、ご紹介しましょう。
緑の炎・実験材料
アルコールランプ
使ったことの無い人はちゃんと使い方を動画などで確認しましょう。火のついたアルコールが飛び散ったりすると危険です。
燃料
メタノールメインのアルコールでないと失敗します。ケンエーの燃料用アルコールのように配合比が75%以上メタノールのものを買うようにしてください。
ホウ酸
薬局で売っている、なんの指定もない薬品です。とはいえ、取り扱いを間違うと危ないこともありますので、薬品の扱いに慣れていない人は説明をちゃんと読んでくださいね。
アルコールの種類を選ぶ理由
簡単にいえば、燃料用アルコールにホウ酸を溶かして燃料にして火をつける。それだけです。
しかしこれで、緑色の炎が出ておもしろーい。じゃ話が終わってしまうし、なんで緑なの? って話にならないのでもう少し掘り下げます。
そもそもアルコールも炭素を含みます。よって通常は炭素の炎色スペクトル(色)であるオレンジ色の炎となってしまうのですが、炭素の数が少なければ顕現しにくいと言えます。それが炭素数が1つのメタノール。1分子あたりに1個の炭素です。
メタノールは炭素原子を1つしか含まないためアルコールランプなどで火を付けると目視しにくい炎の色になり、そのため、ほんの少しエタノールをいれて炎に色がつくようにされているほどです。
燃料用でも成分に注意
逆に言えば東急ハンズなどで売られている燃料用アルコールは危険防止のため、エタノールやイソプロピルアルコールなんかを多めに添加して炎の色が出るように細工してあったりしますので、燃料を探す場合は注意が必要です。
なお、コロナ禍の影響で消毒用のアルコールが品薄になっていた時は、その煽りで燃料用アルコールまでアホみたいな値段を付けて売っている度し難い連中もおりました。
普通に買う分には、せいぜい1本あたり300〜400円、通販ならそれに送料といったところです。
・・・ってか燃料用アルコールを消毒用にして手拭いてるとかだいぶアホなのでマネしないように(笑)。
かんたん実験手順で緑色の炎を観察する
燃料調達のついでに同じく薬局で簡単に買えるものとしてホウ酸が挙げられます。ホウ酸に含まれるホウ素はそれは見事な黄緑色の美しい炎を作り出します。
細かい調整など一切不要なところも優秀です。ただホウ酸の溶けたメタノールは刺激性が高く手に付かないことはもちろんのこと、目に入らないように注意してください。
小さなビーカー(100均なんかのやつ)に50〜100mlほど取り分けて、そこにホウ酸を1〜2g溶かすだけです。分量は適当でOKで、ザーっと入れてまぜて上澄みをアルコールランプにいれるとかザツな方法でもOK。
あとは普通に火をつけるだけで緑色の炎を出すアルコールランプとして楽しめます。
実験時の注意点
注意点は換気の良いところでこの炎は観察しましょう。台所のガスコンロなどで換気扇をつけるなどの換気に気をつけるようにします。
というのも、ホウ酸は燃えるときに刺激性のガスになり、それが目にしみるなどの毒性があるからです。なので締め切った部屋などですると部屋中チクチクして苦しむことになります。ご注意ください。
またホウ酸の溶けたアルコールも素手で触るとチクチク痛いので、必ずゴム手袋をはめて触らないように注意しましょう。余ったアルコールは新聞紙などにしみこませ、上から3倍くらいの水をさらにしみこませて燃えるゴミに出すと良い。
実験はごみ処理まで込み込みです。
その他の炎色反応実験
他にも薬局で炎色反応が観察できるものを2つ紹介しておきます。
押し入れ吸湿剤(塩化カルシウム)
薬局で普通に売られている押し入れやタンス用の吸湿剤。あの中身は塩化カルシウムの顆粒です。ゼリーが一緒に入っている高級なものではなく、底に水が溜まるような安いものがビンゴです。
上の紙を破いて中身を取り出せば安価にカルシウムの発色を見ることができます。メタノールに塩化カルシウムを溶かして燃やすと見事な橙色の炎を見ることができます。
ホウ砂(ホウ化ナトリウム)
薬局ではホウ化ナトリウムとして売られている「ホウ砂」で、黄色の発色を見るために使います。洗濯のりと混ぜてスライムを作ったりするのに使うアレです。
実はホウ化というくらいなので、ホウ素を含みホウ素は緑の発色をするのですが、あえて黄色炎を見るときにはこちらがオススメです。というのも一般的に言われている塩化ナトリウム(食塩)はメタノールへの溶解が非常に悪く色味も微妙です。
カラーファイアをガチ実験化! 緑色の炎のライター
さて、こうした炎色反応を用いた色付きの炎は簡単な実験でも観察出来る訳ですが、もう何歩か踏み込んだものがレイユール先生のガチ実験シリーズで動画として公開されています。
今回の記事でも使ったホウ酸を有機金属にし、更にガスと混ぜて緑色の炎を出すライターを作っています。気になる方はぜひご覧ください。
緑色の炎でお家ライトセイバー
上記のガチ実験でも作られた有機金属を使った炎色反応ガスを応用して「緑色のライトセイバー」を作る動画が公開されました。
理屈の方はガチ実験動画の方をご覧頂くとして、こちらはやはりロマンがあるので、ぜひお楽しみください。
地味だけど超スゴイ炎色反応の実験
ここまで触れてきた通り、レイユール先生はさまざまな炎色反応実験を動画にしているのですが、新たにもう一本、普通では出せない炎色反応を見せる実験動画が公開されました。
その他にも炎色反応についての話がされていて、やり方によって炎の色が変わる……という、教科書では見られない話が展開されています。
また本記事で、エタノールではなくメタノールを指定しているのは何故か、この動画を見れば一目瞭然です。ぜひお確かめください。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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