初出:2020/04/21 Vol.377 クッキーとビスケットから分かるお菓子事情
改稿:2024/02/14
本日は、クッキーとビスケットを通じてお菓子事情を見ていく!
おお、あれこれいろいろ揃えてますね。とりあえずコーヒーか紅茶でも入れましょうか。あ、クラッカーもありますね。こっちはカナッペでも作りましょうか。スパークリングワインが確か・・・
おい、早速飲み出そうとするな。とりあえずお茶にしとけ。
まだ日も高いですしね。とりあえずそのチョコチップクッキーください。昔よくクリックして焼いたんですよ。
また古いネタを・・・ともあれ、日本では、ここにあるもの全部「ビスケット」なんだよね。
へぇ〜〜、大枠があって、その中に分類されてる感じですか。
うん、全国ビスケット協会というものがあって、そこで決められてる。
はっはっは。うむ、菓子か。そういえばケーキを作ったので持ってきたぞ!
ケーキはケーキでもイエローケーキじゃないですか!
クッキーとビスケットの定義
クッキーとビスケット。
同じだと思っている人もいますが、厳密にはビスケットという言葉は、小麦粉類を焼いて固めたお菓子全般の総称で、実はクッキーもクラッカーも乾パンもプレッツェルもJASの規格においてはビスケットと呼ぶことになっています。
ただし、一部は呼び名を変えてもよく、「糖分と脂肪分が全体の40%以上のもの」はクッキーと呼ばれています。
どうしてそんなに細かくなっているのかというと、法的なJAS縛りだけでなく、社団法人全国ビスケット協会という組織があり、ほぼ全ての焼き菓子メーカーは加入しているため、何をクッキーと呼び、何をクラッカーと呼ぶのか、JASよりさらに業界団体で取り決めしているからです。
先ほどの「クッキー」の定義はこの全国ビスケット協会によるものです。
今回はこれら、クッキーとビスケットから日本のお菓子事情を紐解いてみましょう。
なぜ細かい取り決めが必要なのか
さて、早速ですがなぜ、こんな細かい取り決めが必要なんでしょうか?
それは、こうしたルール作りをしていかないと、本来のお菓子からどんどん材料や製法が乖離していって、気がつけば別物が本物を塗り替えるようなことになりかねないからです。
例えばプリンは、本来、蒸したり焼いたりして作るお菓子のはずです。
しかし、店頭に並ぶプリンは、プラスチック製の容器に入ってますよね。焼き菓子であれば容器がおかしいですよね?
プリンという名前のゼリー(笑)
実はプリンとして売られているものは実際は、ゼラチンやアガー(寒天)で冷やし固めたもので、プリン風の味のゼリー・・・というのが正解でオリジナルとは別物に成り代わっています。美味しいので別にいいのですが(笑)
実際、「プリン」と「焼きプリン」の原料を見比べてみると、寒天が入っている、いないがあったりする次第で、焼き菓子扱いの方には含まれていません。
業界がなく規格がないと同じお菓子でも素材が全然違うなんてことも起こりうるわけです。
ビスケットの種類
ビスケットの種類は、大きく分けて、ハードビスケット、ソフトビスケット(クッキー)、クラッカー、パイ、プレッツェル、焼き菓子(加工品)となります。
具体的な製品の例は、以下のような感じです。
ハードビスケット
ソフトビスケット(クッキー)
クラッカー
パイ
プレッツェル
焼き菓子(加工品)
それぞれの製品の特徴
この辺の詳細は、ビスケット協会のサイトにまとめられているのがわかりやすいでしょう。
その上で気になるカロリーなどの特徴を見ていきます。
まず、重さあたりのカロリーは、ハードビスケットが最も低いです。
一方で、パイやソフトビスケット(クッキー)などは油脂が多くカロリー多めになりやすく、さらに口当たりが柔らかいので、パクパクいけてしまいます。
ハードビスケットはグルテンも多く含まれ、硬い歯ごたえは食べ応えがあり、満足感も高く、糖分も控えめなのに甘く感じます。
ダイエット中、どうしても間食したくなったら、ハードビスケットと覚えて置くといいかもしれません。
ダイエットクッキーに潜む罠
ちなみにネット等でよく売られているダイエットクッキーの類いは、実はカロリーはぜんぜんダイエットになっていない商品がまかり通っています。
食物繊維を入れているから、おからを入れているからというだけで、油脂のカロリーはカットできるわけもなく、ダイエット用と言っておきながらカロリー据え置きという商品が多くあるのです。
さて、日本の取り決めによるラベル表示を見ることで、その焼き菓子の脂肪分を知ることが実は出来ます。
カロリーと成分表示
クッキーは、冒頭で触れた通り、糖分と油脂分の含有量が4割を超えているものに対して名前が付けられることになっています。
お菓子作りをしたことがある方ならご存知だと思いますが、これらビスケット類は、ショートニングをはじめ結構な量の油脂で小麦を練って作ります。
原材料をみて一番多い油脂がバターと書いてあるものは原価が高く高品位のものが多い、ショートニングはどっこいどっこい、植物油脂とまとめられているのは及第点みたいな感じで味をある程度見極めることもできたりします。
製品区分は各国のルールがある
さて、これらの区分ですが当然日本では日本のルールがあり、各国には各国のルールがあります。
イギリスではビスケットとクッキーの線引きはありませんし、アメリカはビスケットという言葉自体があまり使われずクッキーで統一されています。
ちなみにお菓子売り場でも人気のプリングルスは、ポテトチップではなくてビスケットであるということが知られています。
どう考えてもポテトチップですが、実はこれ、イギリスでポテトチップに対して肥満予防の税金をかけたのが関連しています。
税金逃れの顛末
プリングルスは「ウチの商品はポテト以外の野菜や小麦粉を混ぜて焼き固めたものだからビスケットつまり税金を払う理由は無い」という脱法ドラッグディーラーみたいなこと言いだしたのです。
結果、2008年に最高裁でポテトチップではないということが確定しました。
故にあれはポテト以外のいろいろなものを混ぜて焼き固めたビスケットと思っておいた方がよいってことですね(笑)。食べ過ぎると太るわけですw
ちなみに2009年にその判決はひっくり返されて結局税金を払うことになったとか。そうそう抜け道めいたことはできない、ということですね。
お菓子やカップ麺の油の量
みんな大好き、ポテトチップスやクッキー、カップ麺(焼きそば)。その油の量を抽出して可視化してみる、という動画を公開しました。
改めて量として示されるとものすごい油の量だということに気付かされますね。
食べるな、とは言いませんが、量には気を付けないとデブの元だということがわかります。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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