初出:2014/09/02 Vol.83 脱法ドラッグとは その2
さて、これらの合法ドラッグの安全性であるが、合法で安全なのは「法的」な部分であり、体に対しての安全性は、非合法ドラッグと何ら変わりないどころか、まさかのより一層危険が潜んでいる。
治療法がない! モノによっては神経毒!
まず第一。多くの非合法ドラッグは元々は医薬品、実際に覚醒剤のアンフェタミンやコカイン、モルヒネなどは医療現場で使われている(日本では大日本住友製薬でアンフェタミンの錠剤があったりする)。
それに対して、近年の脱法ドラッグはもとから麻薬をベースに改造されたものであり、臨床データが存在しないものが大半。故に、毒性や長期的な副作用などが全く分かっておらず、中毒を起こしても治療法が対症療法的にするしかない。
第二に不純物の危険性。実際に日本を含む世界で流通しているエクスタシーの類いは残留水銀がすごいことが知られている。これは精製過程をすっとばしている密造メーカーの都合で、所詮は非合法で流通するもの・・・効果さえあれば、死なない程度であれば毒性は無視・・・これが麻薬の基本となる。
故に、コストもかかるし収量が下がってしまう精製工程はできれば省きたいのが本音だろう。
また、意図しないものが出来ることで、被害が拡大することもある。例えば1970年代にアメリカで合法ヘロインとして流通したペチジンは、不純物としてMPTPという物質を含んでいた。MPTPは脳内のグリア細胞表面で細胞内に入り込みやすい構造に変化、ドーパミン分泌に纏わる神経を次々に殺していくというとんでもない神経毒入り麻薬となっていた。この毒入りペチジンを入手して使った多くの人間にパーキンソン病という手足がまともに動かなくなる症状が見られ、当然服薬を止めても治らず、一生物の障害を背負うことになってしまった。一時の快楽の代償としては重すぎるものである。
非合法ドラッグも合法ドラッグも当然製薬メーカーなどが普通に行っている不純物のチェックなどは存在しない。むしろ精製すると分量が減るため精製を行わない密造メーカーのほうが多数である。また、麻薬には混ぜ物という独自の文化があり、カルキ抜きのようなものが混ざって上げ底されているならまだしも、ガラス片が混ぜられていてそれを注射した人が腕を切断しなければならない壊死を起こした事例もある。
非合法麻薬はその存在自体が長いため、大量服用などでの中毒の対処法も確立されており、治療が可能である。もちろん非合法ドラッグのほうが安全というのは馬鹿馬鹿しいし、当然勧められるものではないが、脱法ドラッグも同様以上の危険性があるということは知っておいて損は無い。
現在出回っている、脱法ハーブの成分についてはまた、次回。