初出:2015/03/10 Vol.110 脱法ドラッグ(危険ドラッグ)と非合法ドラッグ
改稿:2023/11/21
最近立て続けに薬物で有名人がとっ捕まってますね、先生。
まあ定期的に耳にする話ではあるが、ここしばらくは大麻に覚醒剤にMDMAとバラエティ豊かだね。
まったくロクでもない話ですね。私はお酒が飲めればそれで十分ですが・・・(グビッ)
いや、それはそれで、多少は控えた方がいいと思うが・・・アルコールもドラッグだからな。
へい。飲み過ぎには気をつけます。お酒は適量。今日は一杯だけ・・・
そう言っていつも「いっぱい」になるだろう(笑)
ナンノハナシカナー(棒読み)
まあそれはさておき、今回はドラッグの危険性の話である!
麻薬の危険性の話
大麻。覚醒剤。MDMA。薬物の乱用で芸能人が捕まって大騒ぎになったりしますね。
俳優の不祥事で出演映像を封印するなら、テレビ局が不祥事を起こしたら放送権停止とかすればいいんじゃね、と個人的には思ったりしますが、それはさておき。
今回はこの手の非合法なドラッグや危険ドラッグが「どうヤバいか」という話をお送りしていこうと思います。
危ないクスリがどう危ないのか教えもせずに、ただ危ないダメだと言っても仕方がないわけで、こういう話はとても大事です。
非合法ドラッグはもともと医薬品だったものもある
この手のクスリにも色々と種類があり、ものすごく大雑把にとりあえず二分するなら、法律で取り締まられている、いわゆる「非合法ドラッグ」と、その代替品として作られたりして法の網をくぐろうとしている「危険ドラッグ」があります。
この非合法ドラッグと危険ドラッグを比較して云々は大変不毛な話。しかし、あえて言うなら、両者の間にはひとつ決定的な違いがある。
どちらもロクでもないクスリなので危険なのは危険なんですが、非合法ドラッグのほとんどは、もともと医薬品として作られ、使われた経緯があるのです。
濫用や事故の結果、取り締まられることになる
つまり、覚醒剤にせよコカイン、モルヒネ(やヘロイン)、MDMAは医薬品として扱われていた時期もあると言うこと。
ちなみに、アメリカでは麻薬というカテゴリーはなく、危険な薬物をスケジュール1〜5までのランク分けをしているだけ、という点が、日本とは違うポイントです。
これを踏まえた上で話をすると、これらの薬物はその当時、万能薬として出てきたものの、次第に濫用者や事故が顕現してきたため、非合法化(アメリカではスケジュール1化)して取り締まられるようになった、と、そういうわけですね。
危険ドラッグの背景からくる臨床例のなさ
一方、近年ボコボコ出てきている危険ドラッグはそもそも非合法ドラッグの代替品として開発されたり、近い構造をしているというだけで使われるものです。
医薬品として使われた経緯は殆どのモノで存在しない。これが代表的な非合法ドラッグとは趣を全く異にしているしている部分でしょう。
つまり、臨床データが存在しないわけです。
臨床データが存在しなければ、どのような中毒が起こるのかは不明、ましてや、近年の危険ドラッグは、当局から成分分析されにくいように、複雑な混ぜ物として販売されています。
こうして未知の薬剤が未知の配合になっているとくると、もはや中毒症状が起こって病院に担ぎ込まれても対処療法しかないお手上げ状態というわけです。
一回使っただけで神経を破壊する恐怖のドラッグ
かつて、MPTPという代替ヘロインがアメリカで出現したことがあります。
このMPTPの反応時にできる不純物、MPPが、神経を不可逆的に壊し、あっという間にパーキンソン病にしてしまう・・・というのが知られました。
効果は猛烈で、たった1、2回のMPTPの摂取で、全身をまともに動かすことができないレベルにまでなる人もいたとか。
こうしたケーススタディを見ても、危険ドラッグは代表的な非合法ドラッグよりそういったトラブルが起きる確率は高いのです。
このような得体の知れない副作用や毒性が臨床例が無いことで何が起きるか分からないというのが危険ドラッグの何よりの恐ろしさでしょう。
非合法ドラッグの危険性
じゃあ非合法ドラッグは、危険ドラッグと違ってもともと医薬品だったから大丈夫・・・なんて馬鹿な話は当然ですがありません。
非合法ドラッグを作ってる製造所がアンダーグラウンドである以上、他のまともな医薬品のようなグレードで作られることはまずない。
そうすると、やはり異物混入から未知の副生成物の毒性などが危惧されます。実際にアメリカの麻薬厚生施設では、そういった神経障害(残留水銀とか)や身体障害から復帰することも行われています。
混ぜ物や衛生面での危険もある
また、トカナの連載でMDMAの話をした時に触れた話ですが、上げ底用の混ぜ物がヤバかったり、均一な混ざり方をしておらず、場所によっては致死量越えとか、そういう危険性もあります。
この辺詳細は関連記事にリンクを用意しておくので気になる人はそちらの記事をどうぞ。
そういうわけで、非合法ドラッグと危険ドラッグ、どちらが危険かというのはナンセンスな話であり、どこかの馬の骨が作ってどんな衛生状態だったかもワカラナイものを体に入れるのは、命を張るレベルの相当なハイリスクであるというのは知っておいて損はないと思う。
こういう話を抜きに「麻薬・ダメゼッタイ」とか一辺倒に罵倒広告なんか打っても好奇心の塊の若い世代にはゼッタイ通用しねーって思うんだけどなー。
合法昔ばなしで見る脱法ドラッグ
MPTPの恐ろしさは合法昔ばなしでも触れています。ぜひ合わせてご覧ください。
関連して幻覚体験の方も見るとより面白いかと。
アレクサンダー・シュルギン著の「PIHKAL(ピーカル)」「TIHKAL(ティーカル)」
体調不良者続出の「大麻グミ」のヤバさ
2023年11月21日現在の時点で規制の対象外となっていた大麻類似成分「HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)」が含有されたグミを販売、体調不良者が続出している問題がありました。
22日にも規制薬物指定、12月2日にも所持・使用の禁止となる見込みです。
で、これらに関しての自分の見解は以下。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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ヘルドクター・クラレのググっても出ない毒薬の手帳、MDMAの話
危険ドラッグの歴史と経緯
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