初出:2015/10/20 Vol.142 現代科学否定ブーム
改稿:2024/04/21
なんであれとかこれとか、あからさまなニセ科学が世の中に蔓延しているんですかね、先生。
端的に言えば学校教育の失敗だな。本当、最低限の科学リテラシーは身につけておくべきだよ。
面倒な事に、たまに肩書きだけはしっかりしてる人がトンデモを言い出す事とかありますしね。
どこの世界にも、それが例え大学教授であっても、アレな人というのは多寡はあれど発生するものだ。
ところで、某オリンピックの某水質問題とか、先生の力でどうにかできませんかね?
ここに「蒲田くん一号」という生物がいるんだが、これをちょっと改良して解き放てばなんとかなるかもしれん。
・・・それ、放射線量的にヤバい事になりませんか?
さぁ〜〜? やってみないとわからんなぁ〜〜
現代科学を否定するうさんくさいニセ科学
世の中にはどうにも、現代科学というものを否定したがる輩がいて、トンデモなインチキ科学情報、エセ科学とかニセ科学とか呼ばれるいった情報を発信する人が増えてきている。
反ワクチンとか、有用微生物群とか、ガン放置とかもそうですし、美容やダイエットに関しても、メチャメチャな話がまかり通っているのが現状です。
例えば「食べて痩せる」とか。
そもそも、食べて痩せるとか、摂取カロリーが基礎代謝を下回っている(レタスしか食べないとか)、カロリーを奪う氷を食べる以外は不可能です。氷にしたってかき氷にしてもシロップがあると余裕で奪う以上のカロリーになるので、到底現実的ではない。
こんなの、小学校で習った理科のレベルでおかしいと分かるべき話。
「これさえ飲めば痩せる!」なんてものは、それが本当だったら間違いなくただの毒ですし、そんな毒性を持つものはサプリメント(いわゆる健康食品)には認められる訳もないので、これまた、根本的に考えればあり得ない事なのです。
ニセ科学の蔓延は学校教育の失敗
最近は科学に対して、学校での教育の失敗からか、アレルギー的に忌避する人もいます。
が、それは、現代社会を生きるのにおいて、はっきり言って障害になる事の方が多いと言えます。
例えば、一見難しそうに見える「有用微生物群が放射能を消す」という怪しい話も、科学の原理原則を踏まえるとまずアリエナイのがすぐわかります。
根本的なところから「放射能を消す」というのを考えてみましょう。
菌の力で錬金術?
放射能というのは、放射線を出す元素の性質です。それを「消す」という事は、元素そのものを別のものに変える事に等しい訳です。
α線なら、ちょっとした遮蔽で遮断できますが、それ以外の、電子がすごいスピードで発射されているβ線や、光と同じ電磁波であるγ線の類は、菌の力では遮蔽できないものですから、これを遮蔽せずに放射能をなくすということは、先ほども言った通り元素自体を変えちゃうという事ですから、いわば「鉛から金を作る」ようなものです。
すげーな。菌の力で錬金術だぜ!(笑)。
元素の変化は生物がどうこうできる範疇にない
鉄は錆びても(酸化物になっても)、それが銅や鉛、プラチナなんかには決してなりませんよね。
元素の変化は、生物がどうこうできる範疇ではない訳です。それが理解できれば、インチキ以外の何物でもない事がすぐ分かります。
流石にこの手の話は騙される人はわずかですが、そのわずかな人のために、よくわからないものを買わされ、よくわからない呪いめいた事をしているのも事実です。
・・・いや、水質浄化活動の補助金制度の対象に含まれてる自治体とか存在するので、冗談にならん。
肩書きを利用するインチキ商売
インチキの中にも強敵がいます。
例えば一応の医師免許を持っている人間が言い出すとなるとやっかいで、例えば話題になった「ガンは放置したほうが良い、ガンは化学治療も手術も不要」というトンデモ理論。
たった一人の頭のおかしい老医師が言い出した謎理論で、大半の医師や現役の医療関係者が徹底的に否定してもなお、センセーショナル+肩書のチカラで、大変大きな騒ぎになってしまいました。
藁にも縋る気持ちで、このトンデモを信じ込んで、標準治療を受けず、結果として残り少ない人生の時間を浪費してしまった人は、いったいどれだけいるのでしょうか。
耳当たりの良い言葉を鵜呑みにしない
大学教授だろうが、医者だろうが、人間ですから、どこの世界にも頻度の差こそあれ、バカもアホもいます。
肩書だけをみていると、他の意見には目を向けず、特にそれが自分の耳に気持ちいい話であるほど人は騙されてしまいます。
耳当たりの良い言葉を鵜呑みにするほど危険なことはないと言っていいでしょう。
お金がかかるから、副作用があるかも・・・といって、ワクチンが有害かもしれない・・・という話を聞いて「打たない理由」にしてしまう等々、そこかしこにニセ科学は蔓延っています。
ニセ科学への対処方法
幸い、我々の世界は情報化社会と、そんなインチキ情報が山のように入ってくるのと同等に、その反対の意見も山のように出てきます。それらを検索して情報収集することも出来るというのを忘れてはいかんのです。
それらを見たとき、「どちらの意見を信じればいいのか?」と言う人が多いと思いますが、科学のリテラシーが乏しいほど、その真贋を見極めるのは難しい。
故に、最低限の科学のリテラシーは持っているべきなのです。
また仮に、こういったリテラシーを抜きにして怪しさを判別する方法もあります。
怪しい話の見分け方
まずは、感情論で話をしている場合。
例えば「ありがとう」という言葉が水を綺麗にする、とか。汚い言葉をかけ続けたものが腐ったとか。
次に、耳に気持ちがいい言葉を使っていて、具体性のない話をしている場合。
例えば「がんばらなくてもいいんだよ」「ありのままでいいんだよ」などと言い、具体的に何をどうすれば解決するのが何も触れてない・・・とか。
こういったものは、基本的に怪しむべし。
無知な奴は賢くなるか、あるいは死ぬしかない(by アリスインナイトメアの猫)
二酸化炭素を減らす謎装置を切る!
例の「東大の方から来ました」系自称科学者(某事務所所属タレント)がやってる、例の二酸化炭素を減らす謎装置について、問題点を語る動画を公開しました。
あまりにもツッコミどころが多すぎて矛盾に矛盾を重ねている訳で、具体的な内容は動画を見て頂きたいのですが……
本記事で触れたような、リテラシーの低い人達を引っかけるセンセーショナルなやり方、そして肩書きの利用と、装置そのものもさることながら、やり口も実にヤベー感じです。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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