初出:2017/03/14 Vol.215 味の素が頭痛の原因になるという伝説
改稿:2024/10/30
本日は、味の素が頭痛の原因だという都市伝説の話をお送りしていく!
あー、なんか添加物を悪者にしたい人がまことしやかに囁くあれですか・・・
うむ。まあ食品由来の頭痛というのは実際あるにはあるからね。別に、痛いだけで体に悪くはないんだけど。
頭痛がひどいというなら、痛みを感じなくしてやれば良いではないか!(ドゥルルルルルドルンドルンドルン)
そのいかついドリルで頭を破壊すれば痛みを感じないっていうのはナシですよPOKA先生・・・
なぁに、冗談だ。どうしてもというなら風穴を開けてやらんでもないが・・・
はいはい、物騒な話はヤメヤメ。まあ、うま味調味料に添加物各種で作るケミカル料理を作るから、みんなで食べよう。
味の素と頭痛の都市伝説
味の素が頭痛の原因になるという都市伝説があります。
これはトンデモ話の類です。因果関係がはっきりとした健康被害の原因となるモノが流通したまま放置されている訳がありません。
しかし、火のないところに煙を立てたがる連中の実に多いこと。
「食品添加物の毒性に関してメディアで語るには圧力がある」
「スポンサーからNGが出る」
こんなことが、「食品添加物を食べると死ぬ!」なんていう提灯記事で良く書かれてるのを見ます(笑)
今回はこの辺の話に切り込んでみましょう。
怪しい食品ジャーナリストの手口
自分はこれまで、多くのメディアに携わって仕事をしてきて、それなりに裏側も見て、実際にスポンサーの苦情なども見てきましたが・・・そんな圧力は聞いたこともありません。
まあ、どうせ記事を盛り上げて信ぴょう性を持たせるための嘘なんでしょうが、そんなしょうもないのが食品ジャーナリストとか名乗っている訳です。
そんな連中の記事を堂々と掲載しているメディアの方こそ「大丈夫か?」と心配してしまうレベル。
初出当時の頃から、Googleはニセ科学系をバサバサ検索候補から外していますし、近頃では、科学的根拠のない医療広告を排除する方針を発表しており、今後はよりこの辺が厳しくなっていくことでしょう。
よくわかってないことを断言する奴はインチキ
ともあれ、味の素が頭痛の原因になる、という話は、味の素のグルタミン酸が原因というより、塩分の方が原因だとも言われています。
だいたいにして、頭痛自体のメカニズムが複雑なので、どれがどうしてこういう頭痛が起きる、ということが正確に判明していません。
そんな状態では、「この成分が頭痛を引き起こしている毒だ!」なんてことは、当然のことながらハッキリとは言えない訳です。
こういう「ハッキリしてないこと」を断言するのはこの手のインチキの常套手段。
原因が良くわかっておらずハッキリしてないのが頭痛の話なので、「頭痛の原因は味の素だ!」みたいに言い切って、中華料理症候群を添加物の害悪の典型例みたいに紹介している人は、だいたいトンチキなインチキだと思っていいでしょう。
食品由来の頭痛というのはある
一方で、頭痛に関してわかっていることもあるにはあって、食品による頭痛というのは、日本頭痛学会の発表する資料にもあります。
代表的なのは、チーズのチラミンや、赤ワインや、ザワークラウトなどの発酵食品のヒスタミン、柑橘類の皮に多く含まれるシネフェリンのような、フェネチルアミン系の化合物を含む食品です。
これらの成分は、血管に対して、一時的に収縮と拡張という影響を与えることで、偏頭痛の引き金になるとされています。
その中にグルタミン酸ナトリウムという記述もあります。
こういうのを見つけてきて鬼の首を取ったように大喜びする連中もいる訳ですが・・・どちらかというと、ナトリウム過剰による血管の収縮、浸透圧の変化の方が、影響としては大きい気がします。
頭痛持ちは塩分を控えた方が良い、という話
また、ハムやソーセージに含まれる亜硝酸塩は、亜硝酸ですから血管拡張能力が微量でも結構あるので、それが引き金で頭痛を起こすこともあるようです。
ただし、ハムやソーセージも同様に塩の含有量が多いので、具体的にどちらが犯人かはなんとも言えません。
要するに、些細なことで頭痛を起こすような人は、塩分の濃い食事をあまり取らない方が良い、という、それだけの話だとも言えます。
食品由来の頭痛は痛いだけで毒性はない
第一、食品由来の頭痛は「気にしなくて良い」とされており、頭が痛いだけで毒性はないと明言されていることです。
故に、「食品添加物は頭痛を起こすような毒だから体に悪い」なんていうロジックは成立しません。どっちかっていうとこんなことを宣う奴の頭が悪い。
ここで必要なのは、頭痛が起きる量を自分で知っておき、起きるようならそれを避けるようにしようね、ということでしょう。
偏頭痛のメカニズム
ちなみに、偏頭痛のメカニズムは、かつては血管の拡張と収縮で神経活動が変わり、頭痛を引き起こしている、という説が主流でした。
現在は、三叉神経血管説が一番有力視されており、血管拡張の他に、根本的原因はわからないものの、血管の異常な動きから炎症物質の放出が行われ、三叉神経を中心に脳幹から大脳皮質を刺激して痛みを誤認する・・・
つまり、火のないところが大火事になるという、神経のやりとりミスが重なって起きていると考えられており、それに合わせた薬が功を奏しています。
頭痛が続くなら素直に医者にかかるべき
頭痛が続くようであれば、その原因を発見し、治療していくことが大事です。
少しでもおかしいなと思ったら医師の診断を受けて、そのために健康管理をするのが重要。
つまり、いつもの結論になってしまいますが「調子が悪いなら医者に行け」です。
食品添加物を悪者にして解決する問題ではないのです。無意味なスケープゴートで満足して病気の本体を取り逃がすようなことにもなりかねません。
故にただのフードホラーといっても、立派なニセ科学な訳です。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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関連書籍・記事
添加物については拙著「本当にコワい? 食べものの正体」で詳しく解説しています。
特に悪者にされがちな亜硝酸ナトリウムについては、本書の記事抜粋が以下にありますので、ご興味があればまずこちらを。
フードホラーや発がん性、食品添加物の話
天然、オーガニックだから安全とは限らない
添加物の科学:お役立ちのグリシン
トランス脂肪酸の話
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