初出:2016/10/04 Vol.192 殺菌セッケンは害悪なのか?
先生、ヤバい成分が含まれてる石けんがあるって本当ですか?
成分を悪者にしちゃいかん。大事なのは用途!
殺菌石けんは害悪なのか?
2016年9月、アメリカのFDAの発表にて、トリクロサンなどを配合した殺菌性の石けんの販売を原則禁止するお達しを出しました。日本でもそれを受ける形で、厚労省が薬用石けんの成分切り替えをメーカーに促す発表がありました。
薬用石けんというと定番のミューズが思い浮かびますが、このFDAの発表を受けて、厚労省に促される前に成分切り替えを発表していたりもします。
※ミューズ公式サイトの「トリクロカルバンを含む当社石鹸製品について」参照
さて、それから2年以上が過ぎている訳ですが、該当の成分が入った薬用石けんだのデンタルリンスだの、今でもちょっと検索すると「未だに禁止成分が入っている製品はコレ」みたいな情報が飛び交っていたりします。
それだけ、健康被害があるのではないかと気にしている人が多い、ということなのでしょう。
今回はそんな、殺菌石けんやデンタルリンスの有害性や安全性についてご紹介していこうかと思います。
肝心なのは成分ではなく「用途」である
さて、まず最初に、勘違いしてはいけないことについて。
「成分」が悪いのではありません。成分の「用途」が悪い、ということです。
FDAが使用禁止のお達しを出した成分自体に、はっきりとした有害性が確認されたというよりかは、カジュアルな用途で使いすぎるのはよろしくない・・・というのが理由のようです。
例えば、口腔内のデンタルリンスなどで菌の数をコントロールするのは、虫歯予防にある程度の効果が期待できますし、少なくとも口臭を抑えるのには極めて効果的です。
ここで、「じゃあ、手だって不衛生だから殺菌しまくればいいじゃん」という感じもするわけですが、一概にそうとも言い切れないと思うのです。これは半分くらいは自分の持論でもあるのですが、人間の肌は極めて多様な生態系であり、そこに無闇に殺菌剤をぶち込むと、ロクな事にならない。そんな事例が多いのではという雑感があるのです。
それというのも、人間の肌はまず体から分泌される皮脂も、常在菌が分解することで保湿性が高まったりします。我々の体がそのような前提に基づいて出来ているからこそ、角質層だって薄い訳です。
故に、それらを無闇に殺菌してまわる石けんを常用するのは、あまり賢い選択肢ではないと思います。手洗い石けんに強い殺菌剤を使うのは肌にも良くないのです。
この辺の話は、洗いすぎも良くない・・・という話をいくつかの記事でもご紹介しました。具体的には以下の洗顔の記事などですね。
あと、ことある度におすすめしている自作化粧水の話も、市販化粧水や乳液に含まれる保存料が肌の常在菌のバランスを壊す可能性が高いから・・・というのが根底にあります。
また、殺菌性の石けんに使われていて問題とされた成分は、界面活性剤と一緒になることで指紋の奥に残りやすく、丁寧に洗い流さないと薬剤刺激も起こりやすいのです。
相当汚いものを触りまくった後で料理を作らないといけない・・・といった状況では必要かもしれませんが、逆に言えばそうでもなければ使うメリットがないと言えます。
ましてや、育ち盛りの子どもに強制的に使わせるのをイメージさせるCMなどは褒められたものではないでしょう。
これらを踏まえた上で、環境汚染という観点でも議論があったようですが・・・これについては、アメリカ特有の「こいつが悪だと決まったら正義の鉄槌でフルボッコに叩く」という、宗教的な性質が見え隠れするのでなんとも。
「環境に悪いから人間にもきっと悪い!」といった短絡思考に陥るのは楽ですが、そうやって誘導してやろうという感じがするので、なんともなんとも。
肌に安易に殺菌剤を使うべきではない、というのは、手だけではなく、体全体の話です。先ほども触れたように、化粧水の保存料が肌荒れの原因になることもあります。そういう観点でいえば、薬用石けんにさえ気を付ければ・・・という話ではない事がご理解頂けるでしょう。
身の回りの商品が急に体に合わなくなったり、普段の不調が実はいつも使っている商品にあった・・・というのも良くある話なので、これを機会に、見直してみてはいかがでしょうか?