初出:2017/05/23 Vol.225 殺虫剤に発毛効果
ピレスロイドはハゲに効く?
巷ではワサビにミノキシジルの3倍の発毛効果なんてニュースが話題になっていますが、発毛作用だけであれば、数十倍クラスのものはすでに身の回りにあったりします。それがゴキブリなどの殺虫剤。殺虫剤といえば代表的な成分であるピレスロイド。
本来は除虫菊に含まれていた芳香性エステル成分で、除虫菊の草体全部に含まれますが特に多く花に含まれており、蒸気圧は低いので加熱するとどんどん蒸発していきます。
この蒸気を昆虫が吸う(昆虫には肺がないので気門から取り込む)と、神経に作用しナトリウムチャンネルを全開にして、細胞内のナトリウムイオンを過剰にしたり、GABA受容体を塞いでしまい、神経伝達自体を止めてしまう・・・などの生理作用を及ぼします。それが持続しすぎると神経細胞自体が死んで、致死的なダメージとなって真に死に至るという仕組みです。
ゴキブリなんかだと少量をスプレーでしばらく動かなかいと油断してたら時間がたってからピンピン復活したりするので、殺虫剤は動かなくなっても上から十分にぶっかけることが重要といえます。
昆虫(無脊椎動物)の神経と我々脊椎動物の神経の生理はだいぶ異なっており、それゆえ、ピレスロイド系殺虫剤の大半は、我々の体に影響を及ぼさないため、ほとんど無害なまま、一方的に虫を殺すことができるわけです。
故にピレスロイド系は人間の命を奪うような毒にはなり得ないのですが、毛根での脱毛に関係する生理反応にどうやら割り込んで阻害することがうっかり見つかってしまったようなのです。
現在はフェンバレレートやシペルメトリンという成分にミノキシジルを上回る発毛効果が見られているようです。ただし、あくまで動物実験なので人間にも発毛効果がある・・・というわけではありません。
とはいえ、シペルメトリンは1%濃度で、ミノキシジルと同等かそれ以上、最大10%まで効果が増えるのではないかと言われています。もっとも、あくまでもそういう、効果があるだろう、という物質はいろいろあるものの、副作用や危険性試験をして、やっとはじめて「薬」として世に出る訳です。