初出:2013/11/12 Vol.42 俺日記
改稿:2025/02/19

先生、くられ先生・・・ここにもいないな。そろそろ原稿が欲しいんだけど・・・あれ、何このあからさまに怪しい部屋。

関係者以外立ち入り禁止(張り紙)

・・・うん、関係者だし自分。鍵は・・・ああまあ、これなら(カチャカチャ)、なんということだー、不注意にも鍵がかかっていないとはー(棒)

ふっふっふ・・・だいぶ生き物小屋も充実・・・む、誰だ!

あー、原稿もらいにきたんですが・・・なんですか、このSANチェックが必要そうなたくさんの培養槽。

何、みんなボクの友達だよ。友達はつくるもの!
技術は人を殺さない
科学は清く正しい物、その科学を追究する科学者もまた、常に世のため人のためを考え、清廉潔白で、世界が良くなるためなら犠牲を厭わず、常にボランティア精神で社会に奉仕するべき・・・
なんて考える人がいます。何故科学者が人格まで優れていないといけないんでしょうか?
というか科学を生業にしてる人も、世の中の大半の人と同じで、適度に欲深く、適度にアホで、適度に承認欲求もこじらせてます。要するに普通の人です。
しかし、科学や医療に従事している人に対して、常に清廉潔白な完璧な人間で、利益なんか1ミリも追求しちゃだめ・・・科学はそんな汚れてないよ! みたいなことをほざく人が世の中にはいます。それはもう、仙人でも無欲な人でもなく、ただの奴隷です。
拙著「アリエナイ理科」シリーズでも何度も言ってきてますが、科学者だって普通の人です。お金をくれるところで働きたいし、粗末な扱いをする職場では働きたくないでしょう。
そしてこの謎の倫理観と一緒によく語られるのが、「この科学は善」「この科学は悪」といったように、技術自体にレッテルを貼る物です。
最近だと、日本のドローン規制など目を覆うばかりの惨状で、規制したい人達と、それに既得権益を乗せたいヤツが群がって、日本のドローン開発や利用、運用の未来は相当失われたと思われます。
技術自体は人を殺さない。人を殺すのは人だけ。
結局は道具を、技術を、人に向けて使う愚か者がいるということで、技術自体を先に「悪」と設定すると、閉じた世界ならいいですが、世界は地続きです。
いろいろな国があり、他の国に先行を許すことにもなるし、結果的に技術の進歩に法律が早々にしゃしゃりでてきて、可能性を潰してしまうのは、ただのセルフ経済制裁でしかないと自分は考えます。
文明社会で最も重要な「科学者」
科学がこのような無垢な奴隷であっていいんでしょうか。
その科学を扱う科学者は文明の次の一歩を担う、この文明社会では最も重要な仕事だと思うのですが。
数字だけを見て、ご託を並べてマネーゲームにいそしむ経済屋や政治やら法律やら、これらが、発展の前に科学の枷になっていることが多いように思います。
科学者が安く使われる事はあってはならない
日本の「失われた40年」という言葉が最近よく使われますが、これは日本を代表する企業からも見て取れます。
今や国産のパソコンをお店で見るでしょうか?
1990年代には、NEC、富士通、ソニー、東芝、シャープなど、多くの日本企業がパソコン市場に参入し、各社が頻繁に新機種を投入していましたが、今、どれだけ国産パソコンを見るでしょうか?
現在では、これらの企業の多くがパソコン事業から撤退または縮小してるのは売り場を見れば明らかです。
パソコンだけでなく、白物家電も気がつけば、プラズマクラスターだのマイナスイオンだの、オカルト用語を売り文句にするような家電を国を代表する企業が売ってるわけで、なかなか頭痛いです。
この背景となっているのが、科学に対する理解の薄さ、興味のなさでしょう。
結果的に科学を発展させる、新しい技術を開発したい・・・という人も減り、企業も、別に新しいことはいいよね・・・みたいな空気感をだしてしまってるのがよろしくない。
実際科学者は、どんどん安く扱われてて実際、嘆かわしい事に大学などの予算は毎年もりもり削られて痩せ細ってしまっています。
別に科学者にカネに意地汚くなれといっているのではなく、生み出す有用な技術相応の、真っ当な価値、真っ当な競争がおきる程度には、お金を使って欲しいという話です。
・・・というか、そうじゃないと新しい技術は生まれず、他国にどんどん負けていく、負ければ、ないものを買うしか無いから、お金だけが外に逃げていく。
ようするに技術が逃げれば、お金も逃げるのです。
環境が整ってこそ国際競争力が増す
もちろんある程度の法規制は必要だとは思います。
麻薬も規制しなければ濫用されていしまいますし、安全性ナニソレな原子炉を庭で作られては困るわけです(笑)
じゃあ、クローンとかどうでしょう?
人間のクローン技術は確かにガンガン推し進めてOKとは言い難いでしょう。
でも、クローン技術はつまるところ再生医療の骨頂でもあるわけです。クローン技術を使った、免疫拒絶のない臓器の製作や、特定の遺伝子変異が原因で発症する疾患を研究する際に、クローンを用いることで生じる結果を観察して治療法を模索・・・など、メリットもあるわけです。
しかし、そうしたものを感情論で無視したパターンも数多くあります。
ゲームが脳の発育を阻害するとか、ポルノが性犯罪を増やすとか、因果関係がないという話が山盛り会っても「なんかそれっぽいから」という感じで法律まで作ろうとするバカタレが後を絶たないのはみなさんもご存じの通りです。
適切な規制と倫理的なガイドラインの下で、潜在的な利益を最大限に引き出すことが大事で、科学と規制は、常に歩み寄らなければいけないのに、規制側は無理解無勉強で、干渉しようとしてるのが今の段階なので・・・
なんとか、少しでも良くなってほしいなぁ・・・と、螳螂の斧を振るっております。
著者紹介

作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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関連記事・動画
コラボ動画で科学者になるのに大切なことに触れました
科学者と規制と倫理の話は動画で触れてます
「ここは今から倫理です。」は名作です。
この漫画の紹介なんかは以下で。
ワイドショーを見ると不幸になる
メディアはスポンサーを見るべし
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