初出:2019/12/10 Vol.358 機械王の休日:ポリイミドテープの熱分解
・・・・・・(シュゴーーーー!)
本当、ガスバーナーが似合う人だよね・・・POKA先生、今回は何をしてるんですか?
ん、おお。このカプトンテープを熱処理して、カーボン皮膜でも用意しようと思ってな。
確か、前にデトネーションキャノンの点火部の絶縁に使ってたテープでしたね。
うむ。何かと工作に便利なので持っておいて損はないものである!
テープといえば、そこにあるラジオアクティブな感じのテープでぐるぐる巻きになっているブツは一体・・・
はっはっは。細かいことは気にしてはいけないぞ!
そうそう、細かいことは気にしない方が長生きできるよ。
おや、くられ先生・・・そちらはバイオハザードな感じのテープでぐるぐる巻きになってますが・・・
テープ自体は読者プレゼントとかで使ったりしてるよ!
それは知ってますが、なんかところどころ血が滲んでませんか?
・・・沈黙は金、という言葉を知っているかね?
雄弁は銀、と・・・私は何も見なかった。
機械王の休日、第77回をお送りします。今回は、電子工作で絶縁などに使われる「カプトンテープ」ことポリイミドテープを使って、カーボン製の皮膜を作ろう、という話になっております。毎度のことですが、POKA先生はどこからこういう発想を得ているのやら・・・さっそく、解説していただきましょう。
カプトンテープこと「ポリイミドテープ」
電子工作をするなら持っておくと便利なものに「カプトンテープ」があります。
実際に、以前、デトネーションキャノンの点火部の制作で、絶縁に使ったりもしました。
高温部のマスキングや絶縁に使えて大変便利なこのカプトンテープ、実はこれは商品名であり、一般的な名称は「ポリイミドテープ」と言います。
ポリイミドテープは熱で溶けることはなく、分解してカーボンになるのが特徴。このカーボンはグラッシーカーボンと呼ばれるガラス質の炭素です。
ポリイミドテープの熱分解によって得られる高純度カーボンは、電極などの皮膜に使えそうです。実際に、熱処理の仕方を見ていきましょう。
洗浄して余計な成分を取り除く
今回はテープとして利用するのではなく、成分であるポリイミドだけが欲しいので、糊をパーツクリーナーなどで落としてしまいます。
糊の成分はシリコン系の粘着剤が使われている場合が多く、これらが熱分解すると、二酸化ケイ素などが残ってしまいます。
加熱によって消滅する物質なら気にしなくても良いのですが、今回はそうではないので、きちんと事前に除去しておく必要があるわけです。
バーナーで加熱・蒸し焼きにするのがコツ
糊を落とし終わったら熱処理をしていきますが、ここで注意点があります。
空気中で加熱してしまうと、そのまま燃えてしまうので、直接バーナーで炙ったりしてはいけません。空気を遮断して蒸し焼きにしてやらないと皮膜にはならないのです。
よって、顕微鏡のスライドガラスなどに挟んで加熱してやるのが良いでしょう。
ガラス越しにバーナーで炙っていくと、このように燃えたりはせずに熱分解が進みます。
熱分解したポリイミドテープ
カーボン皮膜が出来上がりました。
ポリイミドから作ったカーボンは高純度であり、上手く作ると光沢のあるガラス状のカーボン皮膜になります。今回はちょっと消し炭のようになってしまいましたが・・・まあそういうこともある。
うまく作れれば良い素材となるだろう。ぜひチャレンジしてみて欲しいぞ、諸君!
著者紹介
機械工作、テスラコイル、科学装置、探検など油くさい事から宝探しまで色々やっています。構築・錬成、何でも作ります。https://twitter.com/poka_kikaiou
POKA先生の連載「機械王の休日」はこちら
薬理凶室のパワー担当「POKA」。人は彼を「機械王」と呼ぶ。「アリエナイ科学メルマ」でPOKA先生が連載中の「機械王の休日」の記事一覧です。日頃から機械装置を開発しているPOKA先生が見つけたちょっとしたTipsまとめであります。
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