初出:2018/08/07 Vol.288 機械王の休日:放熱グリスを研磨剤として使う
機械王の休日、第七回をお送りいたします。今回は放熱グリスを研磨剤代わりに使う方法をご紹介。本来の用途とはもちろん違う訳ですが、成分に着目すると別の使い方が見えてくる、というお話になります。
放熱グリスを研磨剤の代用として使えるか
一般的に、CPUやパワートランジスターなどとヒートシンクの間の熱伝導を改善するために、放熱グリスというものが使われています。シリコンオイルをベースに、各種熱伝導性の良い物質を混ぜたものです。安価な白色タイプの放熱グリスには、アルミナや窒化アルミニウムなどの金属酸化物が加えられており、これらは超高硬度のセラミックスで、微粉末には強い研磨力があります。早い話、砥石の主成分のような物と言って差し支えないでしょう。つまりこの放熱グリス自体に強い研磨力があり、研磨作業時に活躍が見込めるという事です。
成分的に白色タイプ以外は使えない
放熱グリスには様々なな種類がありますが、研磨剤として使えるのは白色の最も安価なタイプです。PCショップや電子部品店の放熱機器コーナーに行けばだいたい置いてあります。ここで気を付けたいのは、成分的にこの白色のタイプのもの以外は研磨材としては使えない、ということ。黒色や銀色をした製品だと、カーボンやアルミ粉末などが主成分であるため、強い研磨力は望めません。大事なのは成分です。
銅板を磨いてみる
試しに少量をウエスに垂らして銅板を磨いてみたところ、何の問題もなくピカピカに仕上がりました。
ウエスの方は真っ黒になっているので、それだけ研磨力が強い、という事が分かります。使い勝手はピカールなどの研磨剤とほぼ同じですね。ピカールのような強い臭いもないので、後の洗浄工程を省けるのも魅力的なポイント。乾いたウエスでよく拭き取れば大丈夫でしょう。また、シリコンオイルが基剤であるため、スベスベになってさび止めも期待できます。
ただし、一般的な研磨剤は灯油などの鉱物油をベースにしているために安価ですが、放熱グリスとしては安いものの、シリコンオイルがベースなために、研磨材としては大変高価です。臭いがなくサラサラに仕上がるので意外とアリだと思うのですが、この点は踏まえておきましょう。