初出:2019/01/15 Vol.311 機械王の休日:ホームセンターの丸鋼材
先生、今回は金属加工の話ですか。
うむ。しかし、やはり今一つパワーが足りないな!
いやまあ、加工はやはりハードル高いですよ、POKA先生。
案ずるな!こんなこともあろうかと、誰でも簡単に超パワーで加工できる旋盤を用意した!
これ、動力はなんなの?
無論、原子力だ! スイッチオン!(カッ!)
※死屍累々ですが、みんな元気です。また来世!
機械王の休日、第30回をお送りします。今回はやはり機械工作をする上では外せない場所、ホームセンターで、丸鋼(まるこう)を調達する話となります。そもそも丸鋼とは何か、という点を含めて、POKA先生に解説していただきましょう。
丸鋼とは何か
いきなり「丸鋼」と言われてもピンと来ない方もいると思いますが、これは何かというと、端的に言えば鉄筋コンクリートの鉄筋に使われている、断面が円形・・・つまり円柱型の鋼材の事です。
さらにわかりやすく言うなら、科学動画の鉄アレイで氷を溶かす回で、鉄アレイの前に出てきた鉄柱を想像すると良いでしょう。
あれは切れっ端、という感じですが、もっと長い奴がホームセンターに普通に売られている訳です。
安価な丸鋼
まあ、写真を見ていただくのが一番でしょうか。
こんな感じで、大きなホームセンターにいけば、ゴロゴロと鉄筋用の丸鋼が売られています。旋盤での加工素材として色々と優秀で、試作や治具の製作に便利です。
ちなみに治具とは、機械加工などの際、工作物を固定して、工具の位置を誘導するための道具です。万力とかクランプも治具ですが、モノによっては自作が必要だったりするので、そういった際に丸鋼を使ったりします。
さて、機械工作における丸鋼の利点は、安価な事も挙げられます。910mmの規格品であり、25mmの直径の物でも、1000円もしません。こういった手頃さが、数々の機械装置を作る上での試作に実に都合が良い訳です。
ちなみに、手に入れようと思えば通販でも買えます。
まあ、運搬の問題などがなければ普通にホームセンターでモノを見て買った方が良いと思いんじゃないでしょうか。
さて、続いて規格や材質を見ていきましょう。
太さ
丸鋼の太さは規格で決まっています。ホームセンターで取り扱われているのは、25mm、22mm、19mm、16mm、13mmあたりです。ちなみに25mmは以下のような感じ。
なお、専門店に行けば、もっと太い丸鋼も手に入ります。
材質
ホームセンターで手に入る丸鋼は、SS400と呼ばれる材質が一般的です。柔らかい鉄ですが、粘りが強いのが特徴で、旋盤加工をする際は、バイトの切れ味が良くないと綺麗に仕上がりません。
また、SS400は炭素量が少なくて焼き入れができない鋼材となります。このため、硬度が要求される場合には使えない素材ですが、溶接・ロウ付け・ハンダ付け性は良好です。この辺も試作に向いた部分だと言えるでしょう。
実際に部品を作ってみる
材料の話ばかりしてても仕方ないので、実際に作った部品をご紹介しましょう。
穴あけポンチのハンドル
ホームセンターの丸鋼は柔らかい鉄なので、塑性変形して凹んできます。このため、使って行くうちに手に馴染むので、ハンマーで叩く工具のハンドル材としては最適です。
というわけで、このように穴あけに使うポンチのハンドルを作ってみました。良い感じです。
ねじ部品
ねじ部品として、ローレット加工を施してみました。
ローレット加工とは、滑り止めを目的とした細かい凹凸上の加工の事です。隠し包丁を入れたような菱形が並ぶアレ。
ただ、SS400はただの鉄なので錆びやすいという欠点もあります。ローレット加工は滑り止めを目的にしている以上、汗や皮脂を捉えやすく、すぐに錆びてしまうので、試作には良いですが、実際に使う場合には注意が必要です。
さて、今回は素材の話でしたが、機械工作、金属加工のとっかかりとして、ホームセンターで手に入る鋼材、丸鋼は良いものです。興味はあるんだけどどこから手を付けていいかわからない、という人用の、金属加工の最初の一歩としては良いんじゃないでしょうか。
旋盤の一つも使えるようになっておくと色々と便利だぞ、諸君!
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