初出:2019/04/09 Vol.323 機械王の休日:真空断熱水筒に液体窒素を入れる
そういえばPOKA先生、イベントで水筒に液体窒素入れてましたが、あれ大丈夫なんですか?
最近の水筒は安くても真空断熱構造をしているのも多いからな。一時的に保持する程度なら問題ない!
ああ、保存用のデュワー瓶も、要するにあれでっかい魔法瓶ですもんね。
そういうことである! しかし、取り扱いには注意が必要だ。例えばフタをしてはならん(キュッ)。
いや、言ってる側から、POKA先生?!
むきゃーーー! 今日も仕事が終わらん・・・あれ、何この水t(BOMB!)
と、こういう訳で、密閉すると容器が爆発する!
ああ、くられ先生がモザイクなしではお見せできない姿に!
※あくまで冗談です。本当に危険なので、絶対に真似しないでください。
機械王の休日、第42回をお送りします。取り扱いに注意のいる液体窒素ですが、阿佐ヶ谷イベントの壇上でPOKA先生が実演した通り、条件を満たしてさえいれば、安価な水筒でも液体窒素を一時的に保持できます。今回はその辺の話をお送りしましょう。
真空断熱構造をした水筒・魔法瓶
ディスカウントショップなどで売られている、500円程度の水筒。これを、液体窒素の容器として使ってみます。
モノはこんな感じで、何の変哲もない、ただの水筒です。安価であっても、真空断熱構造をしている魔法瓶タイプであれば、問題なく液体窒素の極低温を扱えます。
ステンレス製であれば、落としても壊れにくく頑丈です。
割高にはなりますが、ネット通販でも入手はできます。が、用途を考えると、ディスカウントの型落ち・安物で十分。大事なのは真空断熱構造をしているかどうかだけです。
デュワー瓶との対比・基本構造は同じ
液体窒素を10L保管できるデュワー瓶というものがあります。見比べてみましょう。
サイズはだいぶ違いますが、しかし、基本構造はほとんど同じ。容器が二重構造で、その空隙が高真空になっています。この「真空断熱構造」が大事なところです。
そもそもの話、液体窒素の保管用に作られたデュワー瓶をもとに、保温が可能な「魔法瓶」が商品として開発された経緯があります。なので、基本構造は似ていて当然なのです。
ちなみにデュワー瓶は普通にネット通販でも売られていますが、なかなか豪快な値段がします。
このデュワー瓶の材質は熱伝導が悪いステンレス製が多いのですが、さらに高級な物では、ガラスで作られている製品もあります。
フタをしてはいけない
このように、液体窒素の保管や保持は、断熱が大事です。しかし、取り扱う上で、フタをして密閉してしまってはいけません。
フタをするとどうなるかというと、気体に戻った窒素によって中の圧力がどんどん上がっていく事になります。そして最終的には、容器が耐えきれず破裂・・・というか、爆発する事になります。
想像するだけでとても楽しいですが、極めて危険なので絶対にやってはいけません。
というわけで、水筒で液体窒素を保持する場合は、このようにフタをせず使いましょう。
そもそもこのサイズであれば、数十分で使い切ってしまうことがほとんど。あまりフタの事を気にする必要はないと思います。
それでも、少しでも液体窒素の損失を防ぎたい、という場合は、厚い発泡スチロール製の板をかぶせるなどして、内部に熱が侵入しないようにするのが良いと言えます。
水筒に入れてみる
では、実際に水筒に液体窒素を入れてみましょう。
最初のうちはこのように激しく液体窒素が沸騰しますが、次第に収まります。一度、沸騰が収まってしまえば、液面は穏やかです。
この状態であれば、数十分以上は液体窒素を保持できます。実際、イベントで実演した際も、結構長い間、保持できていました。
なお、口の大きな水筒だと、空気と液体窒素の液面が触れてしまい、空気中の酸素が溶け込んで液体酸素の割合が若干高まります。
1L未満であれば、爆発などの危険はまずないと言って良いですが、酸素を嫌う実験によっては影響が出る可能性がある事は、気に留めておきましょう。
液体窒素で遊ぶのはとても楽しいぞ、諸君!
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