初出:2016/05/31 Vol.174 薬局で売られている毒
改稿:2024/06/07
本日は薬局売りの薬の安全性についてである!
薬怖い薬怖いっていう自然派の方がたまにいますけど、実際どのくらい安全なんでしょうか?
安全じゃなきゃ薬局でホイホイ売られているワケないよ。まあ、どんな薬だってアホみたいな量飲んだらヤバいけど、それは水とか塩とかだってそうなわけだし。
あとは組み合わせによってヤバいなんて話もありそうですけど・・・
洗剤だって「混ぜるな危険」はあるからね。でも、そういうのも用法用量に書かれてるから。第一、天然自然だから安全だとは限らないわけで・・・トリカブトとか。
薬は用法用量を守って正しく使いましょう、ということですね。
はっはっは。効果がないから倍飲めばいいとか、そういうことではないのだな。よし、では四倍ほど行ってみようか!
POKA先生、ここまでの話を聞いてましたか?
うん? しっかり聞いていたぞ? どうあれ、最終的に力技で解決すればそれで良かろうなのだ!
いやダメだから、ダメだって、こら、それ以上いけない!
薬局の薬の安全性
「薬局で売られている毒ってありますか?」という質問をされることがたまにあります。
結論から言えば、薬局などで売られている薬剤、つまり「薬局の薬」で殺人や自殺というのはできません。
つまりそれくらい安全なので一般的に誰でも買えるレベルになっているという当たり前の構図です。
一応、頭痛薬でも10g近く飲めばLD50に近い値になるのですが、あくまで動物での半数致死量でしかないため、そうそう死ぬことはありません。
楽に死ねる毒はそうそうない
また、仮に薬局売りの薬を膨大な量飲んだとしても、その場合は凄まじい苦痛を伴い、安楽に確実に死ぬなんて成分はありません。
一部の農薬、殺虫剤も毒性がありますが、薬局で買える程度のもので毒殺に使える、などという都合のいいものはほぼありません。
もちろん、組み合わせるとヤバい・・・というものはあります。それこそ、洗剤一つ取っても「混ぜるな危険」があるくらいですから。
でも、そんな事を言い出すと、身の回りのものの工夫次第の話になってしまうわけです。
それに、ムトウハップみたいに、自殺に使われた結果、薬局から姿を消した薬品もあります。それ単体では罪がない優秀な薬剤だって気軽に悪用される類のものは排除されるようになっているのです。
規定外の使用で危険なのは「育毛剤」
そういった前提があった上で、それでも気を付けたい薬局売りの薬剤として、最も危険なのものに「育毛剤」が挙げられます。
育毛剤で知られる成分は、元々は血圧降下剤なので1本まるまる一気飲みすると、かなりの確率で死ぬほどの低血圧が生じるらしく、自殺に用いた例がいくつかあるようです。中毒の事例はちょっと調べる程度で出てきます。
悪用できないように工夫もされている
ただしいずれも本人が助けを求めて救急に搬送されたため、存命しているということです。そうそう悪用などは出来ないように、うまく出来ている、ということでしょう。
また、こういった悪用を防ぐため、苦味成分などを加えてとても飲めないようにするなどの工夫はされています。
なお、薄毛の予防や対処については、関連記事をご参考にどうぞ。
端的に言えば、生活習慣を見直せ、という、ごく当たり前の結論になるわけですが、そこは仕方のないところです。
Q.「ロキソニンを飲み過ぎるとどうなりますか?」
他にも、例えば痛み止めを飲み過ぎると良くないんじゃないか、なんていう質問はたびたびされます。
動画でも「ロキソニンを飲み過ぎるとどうなるか」をテーマに、トラゾースタジオさんとコラボをしました。
もちろん、用量用法を守って正しく使うのが大前提で、飲み過ぎてはいけません。
動画でも触れているように、市販薬であれば、例え1シート分を飲んでしまったところで即座に毒性が出るようなことのないようになっています。
一方で、薬局で売られているような薬を飲み続けないとダメみたいな状態の時は、まず医者に行きましょう・・・というのはとても大事なことです。
教えて!りりか先生 今更聞けない「副作用って何?」
りりか先生の対談動画に「副作用」をお題にしたものがあります。薬の用法用量についても触れられているので、この記事を見てきになった人はぜひあわせてご覧ください。
動画で触れられている「有効量と致死量の幅が広い薬」は少々飲み過ぎてもうっかり死んだりしにくく、薬局で売られている薬はつまりはそういうものが多いという話になります。
もちろん、薬は用法用量を守って正しく使わなければ駄目です。劇中でツナっちが頭痛薬をしこたま飲まされていますが、絶対に真似してはいけません(笑)
「TikTokチャレンジ」で薬を飲み過ぎて死亡
ここまで市販薬の安全性について語ってきましたが、一つ、大きな前提があります。
それは「日本の薬局で買える薬」であれば、という点です。
もちろんどんな薬でもとんでもない量を過剰摂取したら危ない事は繰り返し申し上げております。
それはそれとして、一方で、ちょっと飲み方を間違えると危ない薬とかは医師の処方がなければダメとか、薬剤師さんがいないとダメとか、そういうフェイルセーフが日本にはある訳です。
その上で、TikTokerの間で流行ったらしい、抗ヒスタミン剤の大量服用チャレンジで、アメリカで13歳の少年が死亡しました。ニュースは以下。
それを受けて急遽、有料ブロマガでこの事件について触れたので、気になる方はぜひご一読ください。
無料で公開している部分から一部引用すると
アメリカは自由の国という名目で、社会保障が絶望的に弱い国です。
故に、薬はかなりキツめのものが日本よりかなり簡単に買える空気があります。
またオンライン処方箋などもあり、濫用問題はそこそこ根深いところにあるのですが……
https://ch.nicovideo.jp/kagaku-kaiketu/blomaga/ar2147731
こんな感じで、だいぶ事情が異なります。
それを踏まえた上で、薬というものは用法・用量を守って正しく使いましょう。
CMの謳い文句の定番みたいな一言ですが、これは極めて重要な事なんですよ。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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関連記事・薬局の活用の仕方
さて、今回は薬局と毒の話をした訳ですが、せっかくなので真っ当な利用方法についても触れておきます。まずは、薬局で買えるレベルの、いわゆる市販薬のオススメについて。これは単独記事があります。
詳細なオススメは記事を読んでいただくとして、中でも、風邪の引き始めや予防に良いのは「葛根湯」です。
このほか、薬箱に常備しておきたい薬、という観点の記事も合わせてどうぞ。
また、スキンケアの話をする度に話題に出している自作化粧水の材料も、メインの精製水とグリセリンは薬局で買えます。作り方の詳細は以下。
また、自作化粧水のいつもの三点セットは、以下となります。
宣伝乙とか言われそうですが(笑)、ヒアルロン酸の粉末はネットで買ってしまう方が手っ取り早い事もあります。
また、先ほど触れたハゲについての記事は、以下にあります。育毛サロンとかぼったくりなのでご注意。
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また、「薬局で売っている薬」に関してならば、「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬」という著書で網羅しているので、気になる方はぜひこちらを読んでみてください。