初出:2017/10/17 Vol.246 俺日記
たまには連載ものということで、出版業界の事情についてまとめてみよう。
先生、今でこそYouTuberとかやったりしてますが、元々は編集者で、今に至るまで物書きですしね。
そうなんじゃよー。不良科学者って名乗ったりマッドサイエンティストとか言われたりするけど、これでも物書きなんじゃよー。
にしても、出版業界って知らない人にはわかりづらい仕組みが結構ありますよね。紙の本の編集仕事はしたことないので、私も今ひとつわかってない部分がちらほら。
まあどの業界にもそれぞれ空気というものはあるが、その辺とか、お金の流れの話とかね。
それこそ配信で言ってた「万引きされると書店は死ぬ」とか、そういうのですか。
まあそんな感じ。では行ってみよう。
オチがないではないか! とりあえずこの自爆スイッチを・・・
毎回毎回デンジャラスに落とさなくてもいいじゃないですかうわやめt(BOMB!)
出版不況の現場
時たま配信しているYouTube Liveで、出版業界についてちょっと触れる機会がありました。
以前、メルマガの日記で不定期に、その辺について連載をしたことがあります。
せっかくなので出版不況の現場について、何回かに分けてお送りしていこうかと思います。
まずは、出版業界特有の「空気」とざっくりとした利益の分配、それに伴う書店の事情なんかに触れていきましょう。
出版業界の「空気」
出版業界というのは思いのほかアナログな世界で、自分が知る限り、現在の出版業界の空気というのは、バブルの時に出来上がったものではないかと思われます。
本を実際に作る出版社ですが、銀行からの信用度が高いので融資を受けやすく、その結果、会社の規模次第ではツケを未来にガンガン先送りできるので、実際の経営状況の悪化は制作現場に伝わりにくいのです。
なので、本の制作者である編集者にもその状況が伝わりにくく、その結果、昔のままで本作りをしようとすると、出版部数を減らし、印税を8%、7%、ひどいと5%以下みたいに減らすことで対応しようという空気が出来てしまうのです。
さて、それを踏まえた上で、では「本を売った時の利益」はどのように分配されるのか。
販売方法や出版取次を通す通さないなどで、細かい部分はだいぶ変わってくるのですが、分かりやすく簡略的に例えば1000円の本の収益で考えましょう。
万引きされると書店は大打撃を受ける
出版社で作られた本を販売している書店。実は、本を買ってから売っているのではなく、借りて販売しています。
つまり書店で売れなかった本は版元に返すことができるわけです。
1000円の本が1冊売れて書店に1000円が手に入ると、そのお金は、出版社や取次と言われる人たちに分配されます。まず、書店の取り分は100円程度です。
1冊万引きされると、盗まれた分を購入されたとして、9割分のお金を支払わないといけないわけです。つまり10冊分の利益が吹き飛ぶ計算になります。そりゃ万引きで書店が倒産するわけですね。
また、そもそも万引きはただの窃盗であり、犯罪です。カジュアルな「万引き」という言葉で犯罪を濁すのはよろしくない。
話を戻すと、さらに100〜200円が取次に支払われます。残りの7〜8割が出版社の収益です。
「7〜8割も出版社の儲けになるのか!」という印象を受けますね。
しかし、初版は版代も高く、著者への印税、制作費も乗ってくるので、ぶっちゃけ1000円の本なら1万部は完売しないと本来は「会社として」の利益は出ないといっても過言ではありません。
増刷に関しては、版はすでにあるので、刷るだけなので紙と印刷代だけ、1万部以上であれば、利益が出ていく商売です。
話が長くなってくるので、次回は1万部1000円の本が売れたお金の配分を見て、1万部は売れてないとビジネスというレベルではない・・・というのかお財布事情を開けてみましょう。
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