初出:2014/06/17 Vol.72 心の距離(物理)
ソーシャルディスタンス、って言葉が最近、一人歩きしている感がある。これはもともと、相手との心理学的な距離感の区切りから来る言葉なのだ。
ああ、だから「社会的距離」なんですね。なんか社会的な分断を招きかねない表現だと一部では指摘されているようで。
まあ、それはそれとして、せっかくだから今回はその辺の、パーソナルスペースと呼ばれる、相手との距離感の話をしよう。
はっはっは。危険な実験をする時は、無闇に近づきすぎないように、公共距離、パブリックディスタンスである3.5m以上は離れた方がいいぞ・・・まあ、この超特大の実験装置のエネルギーであれば、暴走したらkm単位で距離を取っていても一発で消し炭だがな!
また、そういうフラグめいたことを・・・言ってる側から、POKA先生、なんかあの装置、ヤバい音してません?
うむ。何か振動もしているようだな! ちょっとパワーを上げすぎたか? まあ、パワーは高ければ高いほどいい!
今回は良くない! 止めて、止めて!!
心の距離(物理)
自分はたまにお悩み相談をすることがあるんですが、恋愛相談や、相手とのコミュニケーションの取り方、意識の差などで悩んでいる方を見かけることがしばしばあります。
こういった問題の共通項の一つが「相手との距離感」というもの。
距離感が掴みづらいと、うまくいくものもいかないことがあります。
そういうわけで、今回は、「心の距離」、それも、物理的に相手にどれだけ近づいて良いのか悪いのか、みたいな話をしていきましょう。
近づきすぎると人は不快感を持つ
パーソナルスペース、という言葉があります。
心理学的な距離の区切りで、「入ってこられると不快に感じる距離」というものある、ということ。
多くは、密接距離(15〜50cm)、個体距離(1m)、社会的距離(1.2m〜3.5m)、公共距離(3.5m以上)と定義されることが多いです。
このうち、社会的距離のことが、いわゆる「ソーシャルディスタンス」です。もともとは心理学的な対人距離の分類だった次第。
ともあれ、こういった区切りで、人間は親密度を無意識に作っているといえます。
もう少しざっくりとした言い方をすると、とても仲の良い人や恋人ならベタベタされても全然平気だけど、そこそこ程度だと近付かれすぎるのはイヤ、ということですね。
近づくと逃げるタイプの猫を想像するとわかりやすいかもしれません。人間にもそういう距離感ってものがあるわけです。
この距離感、というのは、恋愛において、ひいてはコミュニケーション全般についても、大きな意味を持ちます。
恋愛も最初は「ソーシャルディスタンス」を守る
よく「お近づきになりたい相手」という表現をしますが、距離感の話はまさにコレだと言えるでしょう。
対人距離において、公共距離は、個人対個人ではなく、講演中の講師とお客さんみたいな距離感です。
よって個人同士の対話というのは、最初は知らない人同士の距離、会話に不自由はないけど相手の手などは届かないという、1.2m〜3.5m程度の「ソーシャルディスタンス」から始まるものです。
そこから、距離感をいかにして密接に持っていくか、という順序立てが重要であり、それぞれの区分を飛ばして近づくと、多くの場合、嫌がられます。「距離を取られる」ということですね。
要するに、異性相手にいきなりベタベタした距離感で近づかれると、「こいつガッついてるな」とか、そういう雰囲気が生まれてしまうわけです。
個人差はあるが、最初は一定の距離感を保つべき
この辺はもちろん個人差があるわけですが、自分が割と最初のうちから近づかれても平気なタイプだったとしても、そういう人ばかりではないので、最初はある程度の距離感を持って接するべきだといえます。
この辺に無頓着だと「グイグイ来る奴」とか「無神経な奴」と、周囲の人間にまで認識されることもあり、この辺に齟齬が生まれると孤立することもあります。
一方で、距離感を詰めるのが苦手な人ももちろんいるわけで、そういう人はいわゆる「会話の輪」にも入りづらく、なかなか親密な相手ができない、ということも。この辺は、やはり意識して訓練するようにした方が良いでしょう。
何にしても、恋愛でお近づきになりたい相手がいるのならば、先に触れた距離区分を意識した上で、近づくきっかけやチャンス、口実を作り、段階を経て距離を詰めていきましょう。
相手に精神的な威圧感、プレッシャーを与えることなく、少しずつ近づくことができれば理想的です。
この辺、個別に記事がありますが、いわゆる「一目惚れの相手」にいきなり告白するのが悪手である、というのも、ここまでの話でわかるのではないかと思います。
玉砕とかワンチャンとかそういう次元ではなく「知らない人」からいきなり「濃厚接触しましょう!」と言われたらそりゃイヤでしょう?
ホルモンバランスと結婚詐欺
また、時として、こういった「距離感」を見失いやすくなることもあるようです。
ある社会心理学の説によると、それは、二十代後半から三十代中盤にかけての女性。いわゆるアラサーの女性ですね。
社会的にではなく、生物学的に見た女性の役割である「子供を作る」ことができる、ラストチャンスと言える年齢層であることが大きいようです。
こうした、彼氏や配偶者を求める焦りというのはかなりのものであるようで、心理学的なハードルが下がって、距離感を見失いやすくなるというのです。
これは、今子孫を残さないと、もう残せませんよ、と、肉体がホルモンを使い、訴えかけているからではないかと言われています。
実際、こういった年齢祖うでは、プロゲステロンの分泌がエストロゲンより多くなっていく次第。
結果として、急いで配偶者を探すようになり、多少は色々なものに妥協し、心理学的なハードルが下がるのでは、ということだそうで。
そういった焦りを狙い撃ちにする感じで、結婚詐欺にあっさり合う女性も多いので、もはや晩婚化は当たり前の昨今、自分の感じている距離感が本当なのか、再度自分に問い直してみてもいいのかもしれません。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
「アリエナクナイ科学ノ教科書2」好評発売中です!
新刊「マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座 教えて!夜子先生」好評発売中です!
関連記事
恋の悩みを科学で解決する
仕草とモテ
「科学的恋愛指南講座」記事一覧・全8回
IQギャップとコミュニケーション
宣伝
ニコニコ動画にて有料チャンネル「科学はすべてを解決する!! ニコニコ秘密基地」を開設しました!
「アリエナイ理科式世界征服マニュアル」が改訂版となって新発売されます!
「アリエナイ医学事典2」好評発売中です!
「アリエナイ医学事典 改訂版」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典3」、好評発売中です!
くられ先生の単著「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
工作系に特化した「アリエナイ工作事典」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典」改訂版が発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典2」、好評発売中です。