初出:2019/01/08 Vol.310 【精液の味】「味もみておこう」は立派な研究行為だった!
改稿:2023/09/06
今回はワシの正体暴露回です。
亜留間先生、先生にボケられるとツッコミづらいんですが・・・
ところでこの記事、怒られないか不安なんだけど・・・
その、こう、編集で頑張ってオブラートに包んでみます。注意書きも入れますね。
※本記事はあくまで学術的な考察に基づくものです。
亜留間次郎が送る「精液」の秘密
薬理凶室の怪人はバイトでワシの本業は種付け用家畜です。
ワシは精液を吐き出すのが仕事なのでAV業界の人間より精液に詳しいです。
画像出典
射精力の仕組み
精液は睾丸で作られているイメージが強いですが、実際には射精直前に複数の器官からの分泌物が混合されて作成される物で、普通の状態の人間の体内に精液はありません。
その約7〜8割は精嚢で作られる精漿(せいしょう)と呼ばれる体液で射精直前に前立腺分泌物と精子と混合されます。
精嚢は前立腺の後ろにある5cmほどの袋で、一般に精液と呼ばれている物の7〜8割は睾丸ではなくこの袋で生産されています。
そして、精液に含まれているタンパク質は精嚢で生産されており、一般に精液として認識されている液体は「精漿」です。睾丸は精子だけを生産する専用器官なのです。
前立腺で生産されるタンパク質分解酵素は精液の粘度を調整する役目をしており、精液のドロっとした粘液感は前立腺からの分泌物によって決定されています。
射精というものは2段階の生理現象によって行われるので、そのメカニズムを説明しましょう。
フェーズ1
性的興奮によって射精準備状態に入ると、精管の平滑筋が精子を精管膨大部に送りこみ、休眠状態だった精子を活性化させる。同時に精嚢で精漿の生産と蓄積が始まる。
フェーズ2
各部の平滑筋が収縮して精子、精漿、前立腺分泌物が射精管へ送り込まれて混合され、尿道を通過する時にカウパー腺液と混合して射精される。
なお、精液がどれだけ勢い良く飛ばせるか、その能力は精嚢の平滑筋の筋力によって決まります。平滑筋は筋トレで鍛えることが出来ないので、精液を飛ばす能力はまさに天与の才能です。
精液の味
精液に含まれている成分に関しては古くから研究されていました。しかし、複雑な有機物やタンパク質の混合液である精液の成分を分析するのは難しく、1901年にオランダのフーローニンゲン大学のウイリアム・マン(William Mann)が244人の精液を味見して調査しています。
その結果、精液の味に個人差があることが判明しましたが、具体的に何がどう違うのか結論は出ていません。
当時はまだ分析器が発達しておらず、科学研究の分野において成分を分析、比較、同定するための手段として味見という手法が主流を占めていたことによります。
糖尿病も昔は「味見」で診断していた
糖尿病が尿を舐めてみたら甘かったことから命名されたように、本当に昔の尿検査は医師が患者の尿を口に含んで味見して診断していました。糖尿病の診断基準は尿の味だったのです。
なので、いい年の医学者が244人の精液を舐めてみるという研究は当時としては別に変態でも頭おかしかったわけでもないし、むしろ、当時は精液に関して珍妙な学説が唱えられたりしていたので、精液について真面目に研究するのは変態でもなんでもありません。
その「珍妙な学説」については、トカナの連載で解説しているのでそちらを見てみてください。
医学に限らず、有機化学の分野でも古い論文を読むと物質を舐めた時の味に関する記述が結構あるし、万有引力の発見で有名なアイザック・ニュートンはヤバイ物の舐めすぎで晩年、頭おかしくなったという説があるぐらいです。
精子が卵子までたどり着くためのエネルギー
その後1925年には精液中の果糖を単離することに成功した学者が現れて、精液中の果糖濃度を測定する反応が発見された為に味見は廃れ、科学的分析法へと移行しました。
精漿には色々な成分が含まれていて、精子が泳いで卵子までたどり着くためのエネルギーを精子自身は持っておらず、精漿に含まれる果糖からエネルギーを得て泳いでいます。
人間の血液中には栄養としてブドウ糖が溶けていますが、なぜか血液から精漿が作られるときにブドウ糖から果糖へ変換されるという謎があります。これは精子の運動が無酸素運動であるため果糖の方が都合が良いからではないかと考えられているようです。
精子の活発度
体外に出た精液は時間が経過するにつれてpHが低下します。これは精子が精漿中の果糖を分解して乳酸を生じるためです。
この分解速度を示す「果糖分解指数」というモノがあり、「37℃で精子10億が1時間に分解する果糖のmg数」と定義され、この数字が大きいほど精子の活動が活発だと考えられています。
なぜ、最初から精液という形にせず、射精直前に精子と精漿を混合するフェーズが行われているのか。それも、エネルギーを浪費しないためだと考えられています。
ちなみに、フェーズ1のまま射精しないでいると、精子と精漿がジワジワと前立腺の中に漏出し始めて、カウパー腺液と混合して体外に排出され始めます。
膣外射精しても妊娠するリスクがあると言われているのはこのためで、フェーズ2が行われないまま萎えてしまうと精子と精漿は少しずつ尿と一緒に排出されてしまうのです。
人間の精液内果糖含有量は91〜520、平均224(mg/dL)で個体差が大きい。
食べた物によって「精液の味」は変化する
精漿は、フェーズ1の射精準備状態に入ると血液を原料に生産され精嚢の中に溜まる物です。普段から体内に蓄積されているわけではなく、その時の血液中の成分が直接、精漿の成分に反映されるため、食べた物が精液の味に影響するのはちゃんと医学的なエビデンスがあります。
なので、エロ漫画に登場する男性キャラクターが射精する精液は、相手を妊娠させる事が目的なのであれば、果糖含有量が500mg/dL以上あり、果糖分解指数200以上が理想的です。
同様に、AV業界は男優を採用する時に精液の果糖含有量と果糖分解指数を調べてみて、数字が大きほど精液の勢いが良いのでお勧めだと言えるでしょう。
種付け用家畜からの助言
精子は睾丸から直接射精されているようなイメージがありますが、現実には長い間、精管の中で待機していた精子が射精されます。精子の道のりは長く、睾丸の中で精子ができるまで、実に三ヶ月近くもかかるのです。
精原細胞→精母細胞→精子細胞→精子
と、こういった流れで出来上がります。こうして生まれた精子はその後、精巣上体という長い遠回りな道のりを数日かけて移動して精管にたどり着き、そこで休眠状態になって射精の時を待つのです。
この待機期間は一ヶ月以上にも及ぶことすらあり、精子は意外と新鮮な物じゃなく長い時間かけて熟成されていると言えます。
このため、一回射精すると精管の中に備蓄されていた精子が放出され在庫不足になり、二回目以降の射精では精子の量が三分の一程度にまで激減し、三回目以降になると十分の一にまで減ってしまうのです。
これが完全に回復するためには正常な人間でも三日以上の時間が必要です。
射精回数と妊娠率の真面目な話
なので、一回目を膣外で射精した後、二回目を膣内に射精する、などという事をすると、妊娠率が激減してしまうので、妊娠が目的なのであれば、最初から膣内に射精すべきです。
逆に、妊娠したくない場合は、膣以外で二回以上射精させると妊娠率が激減するので、エロ漫画家の先生には是非参考にしていただきたい。
また、こうした精子の減少に対して精漿の果糖含有量は射精回数に関係なく一定値が維持されており、短時間に連続射精しても精液の成分はほとんど変化しないです。
これは精漿が短時間で製造可能な分泌物であることを示していますが、三回目以降はもはや濃厚な精子が含まれているとは呼べない単なる体液に過ぎません。
精力絶倫で何回でも射精できる人間は精子の生産能力が高いのではなく、精漿の生産能力が高いだけです。
なので、AV男優の中でも精液を吐き出す専門の男優は睾丸よりも精嚢の性能を重視すべきです、ダジャレオチ…
著者紹介
薬理凶室の古参三本柱のアルマジロ怪人。人間の皮を被った血統書付きアルマジロ。守備範囲は医学から工学、ノーマルからアブノーマルまで幅広く、アリエナイ理科ノ大事典など、くられ氏と共に薬理凶室関連の共著多数。単著に『アリエナイ医学事典』『アリエナイ理科式世界征服マニュアル』(三才ブックス)がある。よくわからないケダモノなのでよくわからないネタで攻めていきます。https://twitter.com/aruma_zirou
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