初出:2014/01/21 Vol.52 若くして突然死の謎 その2
改稿:2024/10/19
突然死特集、第二回は「睡眠」の重要性についてお送りする!
たまに「忙しくて全然寝れてないわー、マジつれーわー」みたいな感じの「寝てない自慢」する人っていますよね。
いるね。別に自慢げじゃなくても、多忙で慢性的に睡眠不足がひどい人とかね。数年して訃報が来た人もいるけど。
うわあ・・・シャレになってねえ・・・
自分もものすごく多忙なタイミングがあったりするけど、睡眠はなるべくきちんと取るように心がけているよ。脳内の情報整理と肉体の回復にきちんとした睡眠は必須なのだ。
宿屋縛りが許されるのはゲームの中だけですね。
ゲームを延々し続けてネカフェで死ぬ奴もいるがな。
はっはっは。シビアなコントロールが要求される実験では集中力が大事だからな! 寝不足で手が滑ってとかマジ死ぬのである!
その通りだけど、POKAはたまに意図的に手を滑らs(BOMB!)
おおっと、いけないいけない。発破の威力を見たかったのだが、手が滑ってしまったな! 一通り結果を確認したら、今日はもう寝るか! はっはっは!
不摂生による突然死を防ぐ
このところ、どうにも不調が続く。今日はとりわけ具合が悪い。
そういえば最近、睡眠不足が続いていたかも。さすがに辛いんで、ちょっと横になろう。
・・・と、そう思ったら、全身に力が入らなくなって、思考力もみるみる失われ、倒れるように横になったまま、二度と起き上がれずにそのまま死んでいた。
まだ30代、40代という若さなのに訪れる突然の死について、前回は不摂生の積み重ねによるもので、いかにして体が壊れていくかについて触れました。
ここからは「じゃあどうすればいいんだよ!」に対しての答えを解説していきます。
今回はまず健康の三本柱の一つ「睡眠」の役割についてクローズアップしましょう。
健康の三本柱:運動・食事・睡眠
前回も触れましたが、健康には三本柱があります。つまり、
運動・食事・睡眠
この三つです。健康はとても大事なものですが、損なわないとそのありがたみに気づきにくい、などと言います。
しかし、一度、健康を損ねてしまうととても大変なので、まだ間に合ううちにこれらの生活習慣を見直すべきです。
睡眠の役割は何?
適度な運動を心がけ、規則正しくバランスの良い食事をし、夜更かしをせずにきちんと睡眠を取る。
言葉にしてしまえばただこれだけのことですが、そうは言ってもピンとこないという人も多いでしょう。
運動は、体を支える筋肉を維持するのに必要だし、動かないでいると太ってしまうので分かる。
食事は、食べたものが栄養になって体を作るわけだから、これも分かる。
では睡眠は、いったい何をしてるんでしょうか?
「寝てない自慢」は危険信号
運動と食事が大事なのは分かる。でも、人間、少々寝なくったって死にはしないだろう。
たまに本気でそう思っていて、睡眠を削って仕事をするのを自慢げに語っている人を見かけたことはありませんか?
「いやー今仕事が修羅場でさー。全然寝てないんだわー。もう徹夜の連続だわー。超ツレーわー」
愚の骨頂です。ただ吹かしてるだけでそこそこ睡眠を取ってればまだしも、本当に睡眠不足絶頂の日々を送っていると、前回と今回冒頭で触れたように、早死にするリスクが大変高まるでしょう。
実際のところ、与太ではなく真剣に、「人間の睡眠時間は実は不要なのではないか?」とかつて研究された時代があります。
その結果は、惨憺たるものでした。
不眠が何を招くか?
バブル景気に沸いていた時代、某栄養ドリンクのCMで有名で、流行語にもなった「24時間戦えますか」。
当たり前ですが、人間は24時間戦えるようにはできていません。
件のドリンクのキャッチフレーズも時代を経てそういう方向で煽らなくなったわけです(笑)
話がそれました。
さておき、不眠でどれだけ耐えられるか競い合った時代もあったわけですが、しかし、その実験結果から分かるのは、人は寝ないで行動はできないということです。
悲惨な不眠耐久実験
不眠耐久の3日目あたりで意識のレベルが明らかに低下し、判断力、思考力、計算力と、あらゆる機能が極めて低い状態になります。
そして5日目あたりからは、意識がさらに朦朧として、夢なのか現実なのか分からない状態が続き、最終的に幻聴幻臭幻覚と、幻のつくものは全部発動した状態になったとのこと。
その後、すべての被験者が十数時間の睡眠を取ったものの、完全に元に戻るには数日以上かかるというものでした。
ちなみに、寿命の短いマウスを電気刺激で眠らないようにしたところ、2週間で死に至るという実験もあります。
睡眠と情報処理
睡眠はまだ完全に解明されたわけではありませんが、寝ている間に情報処理の最適化を行っているのは間違いなさそうです。また運動神経が成長するのも睡眠中です。
例えるならば、前日なんとか乗れた一輪車が、次の日にはびっくりするほど乗れるようになっていた、という感じです。
個々の運動能力に違いがあるのでわかりづらいかもしれませんが、「できなかったことが、一度できるようになったら、とても簡単にできるようになった」という感覚は、誰しもあると思います。
また、単身外国に行って異国語に囲まれていても、数日でなんとなく分かるようになってくるというのもまた、そうした脳の無意識下の情報処理の賜なのではないでしょうか。
睡眠は肉体の回復時間
また、睡眠中は臓器の再生の場でもあります。
寝ている間に、脳内では神経伝達物質の元が再生産され、次の日の情報伝達に備えられます。内臓も、消化酵素で傷ついた粘膜を再構築し、必要以上の活動を止めて、起きている間に起こる得るストレスに対する準備をします。
睡眠時間というのは次の日を快適に送るための回復時間であるわけです。そしておよそ6〜8時間程度の睡眠時間で人間は次の日に備えることができます。
故に、この睡眠の質が悪いと、次の日の生活の質が下がるわけです。
なので1週間以上続く不眠や、過眠といった症状が出た場合、別にちょっと寝られないだけ・・・と考えず、悪化する前に、心療内科などの病院で治療を受けるべきなのです。
睡眠に関する治療はとても大事
精神科や心療内科に通って、睡眠薬なんてものをもらうようになったら人間終わり
不眠やストレスなんてものは精神力が足りないだけ
そう考えて良いのは、森の中の原始の暮らしをしている場合だけです。
少なくとも人工の灯りや、高速移動など、人類が未だ体験したことのない、超高密度情報社会に生きる以上、歪みは生じて当然なのです。
不眠がかすり傷の間に手を打っておくべきだった・・・と後悔するのは、大穴が空いてからなのです。
次回はどうやって睡眠時間を作るか・・・睡眠の質を上げるか・・・に迫りたいと思います。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
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前回:若き突然死のメカニズム
第三回:睡眠時間を削るという発想をやめよう
最終回:運動はすべてを解決する
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