初出:2014/01/28 Vol.53 若くして突然死の謎 その3
改稿:2024/10/20
突然死特集、第三回は睡眠時間の確保と質の向上についてお送りする!
きちんと寝ないと結果的に無駄に労働時間が増えるんですよね。
そうそう。睡眠不足で作業しても全然効率上がらないからちゃんと寝るの大事。
「よっしゃできた!」と思っても寝て起きて見直すと穴だらけとかザラですし。
はっはっは。そうは言ってもブラックな企業だと長時間労働を強いるらしいがな。
とはいえ、会社勤めで転職とか退職とかはなかなか踏ん切りがつかないもので・・・
何、気に入らない上司を証拠を残さずに「どうにか」したいなら、ここに良いものが・・・
合法的に「どうにか」するなら、やはりあの手が一番・・・
はい、はい! 先生方、そういうのは復讐マニュアルとかそういう体でラジオライフとか書籍でやってくださいね!
前回までのおさらい
突然死特集、第三回です。
原因不明の体調不良が続いて、まだ若いのにある日、突然に死んでしまう。
バリバリ働いていて元気そうだったのに、最近話を聞かないなと思っていたら訃報が届く。
これだけ聞くととても恐ろしいことですが、これは不摂生の積み重ねによるもの、という話でした。
そして前回では、健康の三本柱の一つ「睡眠」は、脳の情報整理と肉体の回復に必要な、とても重要なものであるという点に触れました。
今回は、その大切な睡眠の確保の仕方と質の向上についてお送りしていきます。
ブラック労働と睡眠時間
睡眠が大事なのはわかった。でも、忙しくて満足な睡眠時間が取れないんだよ!
と、そうお嘆きの方も多いでしょう。ブラックな労働環境であることもしばしばの現代社会では、思うようにならないことも多いのが現実です。
努力ではどうにもならないレベルのブラックなら、遠からず体か精神かあるいはその両方を壊すことになるので、さっさと転職先を探すべきだと思いますが・・・
程度問題ではありますが、たとえば淡島りりか先生がかつて経験したブラックを超えるブラックホール企業みたいなところは論外です。
そこまでひどくはなくても、多かれ少なかれブラック気味なところはあるので、判断力が残っているうちに行動すべきだ、とは申し上げておきましょう。
「睡眠時間を削る」という発想はやめよう
が、しかし、それはともかくとして、まず心構えとして大事なことがあります。
そもそもにして「睡眠時間を削る」という発想そのものをやめましょう。
睡眠を削って仕事をする、あるいは趣味の時間を確保する。特に後者は、ストレスの発散に大事そうですが、やめるべきです。
趣味の時間が取れないと耐えられない、というのは、それはその通りです。
しかし、何事もまず、必要な睡眠時間をまず確保してこそ、との意識を持たなければ、ことによっては好きだったはずの趣味さえ楽しめなくなりかねません。
睡眠不足が続くと楽しさを感じる機能まで鈍る
それというのも、睡眠不足が続くと、楽しいことをしていても楽しさを感じにくくなってしまうからです。
たかが睡眠不足と侮るなかれ。眠りが足りないと、思考に必要な脳の神経伝達物質も枯渇していきます。
それは、楽しみ、幸せを感じるための伝達物質も例外ではありません。故に、睡眠時間を犠牲にし続けるのは得策ではないのです。
徹夜仕事は結果的に意味がない
そもそもにして徹夜続きの状態での労働など、効率が極端に低下します。それは前回、不眠がもたらす悪影響でも触れた通りです。
本来のパフォーマンスを発揮すればサクサクと進んでいく仕事も、効率が落ちた状態ではまるで進まず、長時間労働に拍車をかけるだけです。
故に、どれだけ忙しくても、睡眠時間ありきでスケジュールを組むのが大切なのです。
どれほどの睡眠が必要かは人それぞれですが、自分にとって最適な、また最低限必要な睡眠時間はどれくらいか、日々、自分を観察して計算しておくのが必要だと言えるでしょう。
睡眠障害は速やかに専門医へ
そして、睡眠については時間もさることながら「質」が大事です。
このため、寝つきが悪い、眠れない、あるいは長時間寝ていても疲れが取れず寝た気がしない、というような障害が出ている場合は、速やかに専門の病院で治療を受けましょう。
不眠症であれば精神科か心療内科、寝てるのに眠い、疲れが取れないというなら睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いもあるので、検査を行っている専門の病院で見てもらうべきです。
精神疾患は気合いや根性では治らない
精神疾患は心の病と言われており、そのためか「気合・根性が足りない」などとアホなことを抜かす無知蒙昧な連中もいますが、明確な「病気」です。
精神論で治ったら医者は苦労しねえよ。
人間を化学という視点で見ると、精神疾患はしっかりと脳内の受容体の数や伝達物質の量、その他、脳内ホルモンのバランスがおかしい異常状態になっています。
聴診器で分からない、顕微鏡で見られないだけで、しっかりと機能不全を起こしている「病気」なので、治療が必要なのです(最近は画像診断や血液診断も出来るようになってきましたが、まだまだ精度は微妙です)。
傷が浅いうちに治療を始めるのが一番
前回も軽く触れたことですが、精神疾患で病院に行くのに引っかかりを覚える方もいるでしょうが、他の病気でもそうであるように、治療をするなら悪化しないうちの方が良いです。
「何かおかしいんじゃないか?」と感じたら、それは即ち治療が必要と考えましょう。
もちろん放置して治る場合もありますが、悪化する確率の方が高いので、考える頭があるのであれば病院に行くべきなのは必然です。
幸いなことに向精神薬の大半は安く、そして安全です。
薬を飲むのは副作用が怖いという人もいますが、それが行き着いて先鋭化すると反ワクチンや反医療といったあかん方向に流れたりします。
薬を飲まないでいて辛い症状を抱える方がよほどダメージが大きいです。
病気の素人判断は危険・勝手に投薬中止をしない
注意が必要なのは、薬に溺れないこと。しっかりと直したいという意思をもって、薬を選んで使うことが大切です。
ただしこれは、当然ですが専門家である医者ときちんと相談した上での話で、その指導に従うのが大前提。
素人判断で勝手に投薬の中断をしたりするのは論外です。医者の言うことは聞きましょう。
たまにこの辺のことを守らずに悪化させている人もいますが、薬というのは用法容量を守って正しく使わなければ正しく効果がでません。
治療は根気強く行う必要がある
また、大半の精神に働く薬が有効な結果を出すのは早くて1ヶ月といったところです。耐えきれない副作用でもない限り、2週間は我慢。この辺も、気になる点はちゃんと医者に伝えましょう。
その上で、あまりにも医者との相性が悪い場合は、別の病院探し、という感じで行くのが良いでしょう。医者にも良し悪しがあるしね。
また、お薬手帳は必ず付けておきましょう。どんな薬を飲んでいたかは医者にも薬局の薬剤師にも重要な情報です。
最終回である次回は、死なないための運動と食事です。
著者紹介
作家、科学監修。「科学は楽しい!」を広めるため科学書分野で20年以上活動。著作「アリエナイ理科」シリーズ累計50万部突破。原作を務めるコミックス「科学はすべてを解決する!!」も50万部を超える。著作「アリエナクナイ科学ノ教科書」が第49回・星雲賞ノンフィクション部門を受賞。週刊少年ジャンプ連載「Dr.STONE」においては漫画/アニメ共に科学監修を担当。TV番組「世界一受けたい授業」「笑神様は突然に・・・」NHK「沼にハマってきいてみた」等に出演。ゲーム実況者集団「主役は我々だ!」と100万再生を超えるYouTube科学動画を多数共同製作。独自YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」チャンネル約30万登録やTwitterフォロワー16万人以上。教育系クリエイターとして注目されている。関連情報は https://twitter.com/reraku
「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
「アリエナクナイ科学ノ教科書2」好評発売中です!
新刊「マンガでわかる! 今日からドヤれる科学リテラシー講座 教えて!夜子先生」好評発売中です!
関連記事・動画
りりか先生の「ブラックを超えたブラックホール企業」の話。
第一回:若き突然死のメカニズム
前回:睡眠の重要性
最終回:運動はすべてを解決する
連載「突然死の謎と仕組み」記事一覧
連載「科学的に見る若さの話」記事一覧
寝ても回復しない睡眠不足・悪夢の迷宮。JokerのSASの話です。
睡眠の質を高めるにはお布団選びも大事
スキンケアは睡眠も大事
宣伝
ニコニコ動画にて有料チャンネル「科学はすべてを解決する!! ニコニコ秘密基地」を開設しました!
「アリエナイ理科式世界征服マニュアル」が改訂版となって新発売されます!
「アリエナイ医学事典2」好評発売中です!
「アリエナイ医学事典 改訂版」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典3」、好評発売中です!
くられ先生の単著「アリエナイ毒性学事典」好評発売中です!
工作系に特化した「アリエナイ工作事典」好評発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典」改訂版が発売中です!
「アリエナイ理科ノ大事典2」、好評発売中です。